1. HOME >
  2. 研究トピックス >
  3. 磁気ゆらぎを利用した巨大磁気抵抗効果の観測に成功 ―単一結晶のみを用いた磁気デバイス応用への道―
研究トピックス
2020/03/26 投稿

磁気ゆらぎを利用した巨大磁気抵抗効果の観測に成功 ―単一結晶のみを用いた磁気デバイス応用への道―

大阪大学大学院理学研究科の大学院生の谷口祐紀さん(博士後期課程3年)と新見康洋准教授らの研究グループは、フラストレート磁性体と呼ばれる磁気ゆらぎの強い結晶を用いて、単一結晶のみで巨大磁気抵抗効果の観測に初めて成功しました。

巨大磁気抵抗効果とは、磁気をもつ鉄やコバルトのような磁性薄膜と、磁気を持たない銅のような非磁性薄膜を何層も重ねた系で実現する現象で、身近なところではハードディスクドライブの読み取りヘッドにも応用され、2007年のノーベル物理学の受賞対象にもなっています。通常巨大磁気抵抗効果には、2種類以上の物質が用いられ、さらに高度な成膜技術が必要でした。

そこで研究グループは、フラストレート磁性体と呼ばれる磁気ゆらぎが強い磁性体に着目し、単一結晶のみでの巨大磁気抵抗効果の観測を目指しました。先行研究では、フラストレート磁性体の純良結晶が得られていないことが巨大な磁気抵抗効果を測定する上で問題でしたが、研究グループはその物質をマイクロメートルサイズに微細化することで、純良な結晶を抽出することができました。この純良な結晶で磁気抵抗を測定(図)した結果、これまでより弱い磁場で、しかも単一結晶のみで巨大磁気抵抗効果を観測することに成功しました。これは、磁気ゆらぎという新しい機構に基づいた巨大磁気抵抗効果で、単一結晶のみを利用した磁気メモリデバイスへの応用につながる大きな一歩となる成果です。

本研究成果は、米国科学誌「Scientific Reports」に、2月13日(木)19時(日本時間)に公開されました。

図:本研究で得られた巨大磁気抵抗と素子の電子顕微鏡像。


Related links

本件に関する問い合わせ先

大阪大学 大学院理学研究科 准教授 新見康洋(にいみやすひろ)
TEL:06-6850-5586    FAX: 06-6850-5371
E-mail: niimi@phys.sci.osaka-u.ac.jp