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国際交流

教員インタビュー 「グローバルに活躍するには」

日本の大学は今、より国際化を推進することが求められています。理学研究科・理学部は、研究者や学生が国際的に活躍し、世界中の研究者や学生にとって魅力のある研究・教育の場となることを目指しています。現在国際的に活躍している理学研究科の教員による事例とアイデアをご紹介します。

インタビュアー:理学研究科URA 卓 妍秀、坂口 愛沙

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teacher01大鹿 健一 教授
数学専攻(位相幾何学、離散群) 2016年7月12日インタビュー

現在の国際共同研究や国際交流活動について教えてください。

 断続的ですが、ストラスブール大学(フランス)には毎年行っています。その先生とは研究集会で出会い、分野も近く、一緒に研究集会をオーガナイズしたりして、4~5年続けています。韓国にもよく行きます。KIAS(Korea Institute for Advanced Study)という研究所で、去年まで6年間フェローをやっていて、毎年1~2ヶ月くらい行っていました。

どのような形で大学院の学生指導をしていますか。

一緒に実験したりするわけではないので、セミナーなどで議論したりします。フランスでは、珈琲でも飲みながら、ちょっとリラックスした感じです。フランスの学生とはフランス語で会話します。フランスには、助教授の頃、東工大にいたときと東大にいたとき、ポストはそのままで1年ずつ計2年留学しました。そのときはパリの郊外の研究所に行きました。

国によって学生指導の方法に違いはありますか。

少し違います。アメリカでは、指導教員と学生が近く、教員が問題を与えて、学生が学位論文を書いて、それが初めての論文になる。ヨーロッパではもう少し独立していて、自分で問題を考えて、学位をとるときには出版された論文がいくつかある。日本でも、我々が学生のころはヨーロッパ式に近かったのですが、今はアメリカ式になっています。大学院重点化あたりで、大きく変化しました。大学院生が増え、助手というポジションがほとんどなくなり、就職のサイクルが遅くなりました。これからどうなっていくのか難しいところですね。

日本での授業やセミナーを英語などの外国語で行うことはありますか。

まずありません。日本人は日本語の方がいいですよね。数学の場合、英会話教育のようなものは重要ではないと感じます。ただ、いろいろな外国語は知っていた方がいい。私はどちらかというと英語偏重には反対です。フランス語かドイツ語もできた方がいい。少なくとも読めないと。フランスではフランス語で論文を書く人もいるし、昔の文献はドイツ語が多い。我々は19世紀のものでも読みます。今でも役に立つし、いまだに正しい。数学は説の積み重ねです。どこの国にいっても数学は独自の図書館をもっています。ヨーロッパの大学にはものすごく古い本があって、うらやましいです。

国際共同研究と、日本での共同研究の違いはありますか。

あまりないですかね。数学者の場合は、数学者としてのキャラクターが強すぎて、どの国の出身であるかはあまり気にならない。どこの国にいっても、数学者は大学の中でなんとなく異端な感じです。ラフな格好をしていて。

国際交流等に関する大学・研究科のサポート体制への期待はありますか。

研究科での学生の旅費サポートは、発表が決まってから申請するので使いづらいですね。すでに使えるお金がわかっていればいいのですが。最近は、競争的資金以外の研究費がなくなり、安定した財源がありません。私立はもう少し研究費があります。数学だと、旅費として年間50万円もあればなんとかなるのですが。国立大学は、今はそれもない。各人に広く少ない研究費の分配が数学には必要です。
日本の学生で海外に行っているケースはないですね。日本では就職状況が悪いので、海外にいくと、その後が不安になる。国内で名前を売っておいた方がいいと考えるのでしょう。

国際的に活躍するために必要な要素は何でしょうか。

数学がきちんとできればいいとは思います。数学をやっていれば、自動的に国際的になります。どちらかというと、文法的にきちんと、誤解のない文章が書けることが重要です。読むのももちろん。最近の大学入試の英語は簡単で、単純な文章で、よくないですね。

最後に研究者、学生に向けてメッセージをお願いします。

これから大学は、多様性を大事にして、できるだけ特定の分野だけが発展するようにはならないようにすべきだと思います。学生も、いろんなバックグラウンドの人が来られる方がいい。留学生だけじゃなく、日本の中でも、たとえば特別に恵まれた家庭に育ったわけではない人も。国立大学の良さはそこにある、社会に役に立つ必要があると思います。産業に役立つだけじゃなく、教育でも役に立つ。高度な教育をいろんな家庭の人が受けられるようになってもらいたい。これは、研究機関であることと両立できることだと思います。ヨーロッパの大学はほとんどタダです。大学の機能は研究以外にもいろいろあると思います。たとえば、社会の構造をどう再生産できたか、階級差・階層差をなくせたか。日本はもともとヨーロッパ型を目指していたはずです。昔はお金がなくても大学に行けました。このままだとどんどんアメリカモデルに近づいてしまいます。
それから、特定の研究に巨額を投じるのではなく、合理的かどうかよく考えて、薄く広くの方が、効率がいいと思います。基盤的研究費は確保すべきだと思います。

写真:大鹿教授と今年3月にストラスブール大学で学位をとったVincent Albergeさん(現在はアメリカ・ニューヨークのFordham大学visiting assistant professor)

写真:大鹿教授(左)と今年3月にストラスブール大学で学位をとったVincent Albergeさん(現在はアメリカ・ニューヨークのFordham大学visiting assistant professor)

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teacher02黒木 和彦 教授
物理学専攻(量子物理学) 2016年7月4日インタビュー

現在の国際共同研究や国際交流活動について教えてください。

最近、韓国のKAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)の先生と共同研究をやっています。3年くらい前に、日本で開かれた国際会議で声をかけていただき、実質的に2年半くらい、共同研究をやっています。もともと、(黒木研の)前身の研究室で助手をされていた小谷先生(現在は鳥取大学工学部教授)と、KAISTのHAN先生の間で共同研究をしていて、その関係で声をかけてきてくれました。具体的には、私がアイデアを出して、小谷先生の研究室で計算の技術的なことを考えて、HAN先生の学生さんが実際の計算を行うという形でやっています。HAN先生が、毎年1~2回日本に来て、私も韓国に行き、ディスカッションしたり、セミナーをしたりしています。

国際共同研究の良さを感じるのはどんな時ですか。逆に難しさを感じるのはどんな時ですか。

HAN先生との間ではうまくいっています。しいて言えば、日本人同士のディスカッションに比べて、外国語だと微妙なニュアンスがやりとりしづらい、というのはあります。相手を傷つけてしまわないよう、気をつけています。たぶん向こうも同じ苦労をしていると思います。実際話していても、言葉を選ぶのに苦労しているな、と感じるときがあります。
KAISTの学生さんは、非常に優秀ですが、英語のコミュニケーションは十分でないところがあります。日本人の学生の多くは、英語の読み書きはできるが、話すのは全然できないという印象をしばしば受けます。日本語ではディスカッションができるけれど、英語になるとできない。これは学生さんに限らず、国際会議などでも、日本人の英語力は劣っていて損をしていると感じます。

国際共同研究に関する大学・研究科のサポート体制への期待がありましたら教えてください。

学生の国際学会旅費支援などのサポートがあるのはいいことだと思います。若いうちに、積極的に海外に行くとか、留学経験を積むというのがいいと思います。私には留学経験がなく、それがマイナスだったと思っています。若いうちに海外に行った人は、海外で研究者同士の濃い関係を作って、いずれお互いの学生を派遣しあうという関係の人が多いように感じます。私自身も、助手をしていたときに短期留学を考えましたが、研究室の事情などを考えてやめてしまいました。研究室に気兼ねすることなく、若いひとたちが一時的に出て行ける環境があることが、重要と思います。海外にいっても戻ってくる場所がないと、将来的にもマイナスですし。周りを見ていると、一番親密な関係を築けるのは、ポスドクですね。同じ研究室に同時期にポスドクでいた、一年一緒に過ごした、という時間があると、その後お互い帰国しても、緊密な関係が続けられるのだと思います。

理学研究科のグローバル化のためにアイデアがありましたら教えてください。

まずは、英語で会話、コミュニケーションできる力が、どうすれば上がるのか、ですね。とにかくやればできるようになる。何か具体的な目的があればいいのかもしれません。
今、大学院の授業を英語でやっていて、物理学専攻の場合は(英語コースの)IPC(International Physics Course)と部分的に授業を共通でやっています。英語の授業は、プラスの面もマイナスの面もあります。授業の内容がそれなりにハイレベルなので、英語だと日本人の学生はかなり大変と、アンケートなどでもよくわかります。英語の授業は、英語を聞き取る能力はある程度上がるかもしれませんが、物理学の方の理解が落ちてしまう可能性があります。どっちをとるかは難しい問題です。どうしても不満は出てきます。日本語の授業に比べ速度を落としても、アンケートでは「わからなかった」という意見がありました。日本語で聞いても易しい内容なら、それを英語でやるのは、彼らにとって英語を聞き取るという意味で大きなメリットになると思いますが、授業のレベルはかなり高いので、大変なようです。

研究者が国際的に活躍するために必要な要素は何でしょうか。

同じ問題を考えるのでも、日本人のとらえ方と、外国の人たちの見方は違うことが多いので、彼らとふれあうことで、こういう見方もあるのだと気付かされることがけっこうあります。自分の研究に新しい切り口を見いだすという意味でも、海外の人と議論するのは大きなメリットだと思います。そういうことをモチベーションにして、積極的に機会を作るのがいいと思います。
国際学会でも、日本人はなかなか質問をしません。これは単に語学の問題ではないと思いますが、非常に大きな問題です。日本語のセミナーでも質問しないことが多いです。いつからそうなってしまうのでしょうね。たとえば子供の授業参観に行くと、みんな積極的に手を挙げているのに、ある段階からまったくそうしなくなってしまって、その対比が面白いなと思います。一言で言えば、恥ずかしいというところに行き着くのかもしれません。こんなことを言ったら恥ずかしいという壁ができてしまうのかもしれませんが、外国の方や海外にいる日本人はそういう壁がないように見えます。

最後に研究者、学生に向けてメッセージをお願いします。

特に、若い人に、若いうちに、積極的に海外の人たちと触れあう、緊密に触れあう機会を作ってもらいたいと思います。

写真:左から黒木教授、インタビュアー坂口、卓

写真:左から黒木教授、インタビュアー坂口、卓

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teacher03長峯 健太郎 教授
宇宙地球科学専攻(宇宙進化学) 2016年6月27日インタビュー

現在の国際共同研究や国際交流活動について教えてください。

H25年秋からケンタッキー大学(米国)のシュロスマン教授と「宇宙論的視点で追う巨大ブラックホールの生成と進化」について共同研究を行っています。これまでに大学院生を含め、共同研究者がのべ8名ほど研究機関を行き来して研究を進めています。また、共同で滞在型研究会を開催し、国際学会で数回発表し、3編の共著論文が専門誌に掲載されています。阪大のResOUや海外メディアなどでも紹介されました:http://resou.osaka-u.ac.jp/en/en/highlight/2016/20160318

国際共同研究を始めたきっかけについて教えてください。

シュロスマン教授は私が米国在住中からの知り合いで、以前にもNSFプロポーザルを共同申請するなどして共同研究を模索していましたが、なかなか実現しませんでした。その後も議論を継続し、阪大国際共同研究促進プログラムの機会をうまく捉えて共同研究を実現することができました。

国際共同研究の良さを感じるのはどんな時ですか。逆に難しさを感じるのはどんな時ですか。

世界の最先端研究を意識した研究者と議論を戦わせながら、共同研究を遂行するとき。世代が離れた研究者から研究に関するアドバイスをもらいながら研究し、またさらに世代が離れた若手研究者を共に育成することができることも魅力の一つです。
難しい点は、互いに訪問していないときに距離が離れていると意思疎通がうまくいかないことです。週に何度もスカイプ会議をすることもありますが、お互いに限られた時間の中で研究の方向性を決めていくのが時に難しいこともあります。国際共同研究をしていると、やはり実際に顔を合わせて議論することがいかに大切かということを実感します。

国際共同研究に関する今後の計画、大学・研究科のサポート体制への期待がありましたら教えてください。

日本の経理は単年度ごとに分断されていて、研究経費の使い勝手が悪いです。科研費は繰り越しが最近できるようになりましたが、似たような事を何度も記入したりする書類が多く、まだまだNSFやNASA のグラントに比べると使い勝手が悪いです。また、大学事務職員の英語に関する対応能力も全般的に不足しています。
本国際共同研究促進プログラムは、大学における研究活動のグローバル化に少なからず風穴を開けることができているのではないかと思います。我々の共同研究チームのようにうまく機能しているチーム、成果が出ている研究チームを引き続きサポートするなどの継続性を持った取り組みを今後お願いしたいです。

理学研究科のグローバル化のためにアイデアがありましたら教えてください。

一番大事なことは会議の時間を極力減らして、各教員がアクティブに研究活動を遂行することです。私が会議にばかり出席していると、シュロスマン教授から「お前はいつ研究しているのだ」と叱られて、私にとってはよい刺激と戒めになっています。
良い研究を国際的なフロンティアで実行し、発信していれば外部からの訪問者も増えて研究交流が活発になり、自然と理学研究科全体のグローバル化につながるはずです。研究交流が少ないということは、研究のactivityが低いということの裏返しだと思います。
また、科研費を取得して研究を活発に行っている教員には授業負担を軽減し、6-7年おきにサバティカルをきちんと取る環境を整備して研究活動をrejuvenate(活性化)する機会を与えなければ、研究者としては次第に枯渇して行ってしまいます。

研究者が国際的に活躍するために必要な要素は何でしょうか。

若いうちにコミュニケーション能力をしっかりと磨くことです。自分の殻に閉じこもらずに、外の風に自分からあたりに行き、挑戦し続けること。他人と議論することで新しいアイデアが生まれるので、まずは人の意見を聞き、意思疎通できるようになることが大切です。また、しっかり議論するためには普段から勉強によって自分の考えを養っておかなければいけません。そして自分の考えを論理的に述べることができるようになることです。

最後に研究者、学生に向けてメッセージをお願いします。

学生さんや研究員たちには、若いうちに「頭・心・腹」の3つをしっかり磨くことをお勧めします。頭が良いだけではダメで、しなやかで弾力性のある心、ガッツと根性を備えた腹を鍛えることも厳しい競争社会で生き残っていくためには必要です。そのためには何か一つ自分が打ち込めるものを見つけてとことんやってみることです。それはスポーツや勉強であってもいいでしょう。そのような経験は、どのような職業についても必ず役に立つことでしょう。
そして、そのようにして培った自分の力がどこまで通じるか、世界の舞台で試してみることです。日本はせまく、閉じたところが多い島国です。学会の規模も小さいし、研究者の層も薄いです。若いうちに自分から外に打って出て、上には上がいるという環境で、様々な人と出会い、とことん自分を試してみてほしいと思います。
教員の方は、そのような若人を受け止められるように、現在の職に甘んじることなく自分自身が挑戦し続け、一生勉強を続けなければいけません。

写真:左から長峯教授、シュロスマン教授、インタビュアー坂口

写真:左から長峯教授、シュロスマン教授、インタビュアー坂口

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teacher04小川 琢治 教授
化学専攻(物性有機化学) 2016年6月13日インタビュー

現在の国際共同研究や国際交流活動について教えてください。

Åbo Akademi University (フィンランド)(現Nanyang Technological University(シンガポール))のProf. Grzegorz Lisakとは、学会で知り合い、共同研究を始めました。きっかけは、小川研の学生のポスター発表でした。アクティブな学生は、国際会議に行くたびに友達を作り、共同研究者を見つけてきます。その中で論文発表にまでいたる例も有ります。
National Taiwan University (台湾)のProf. Jye-Shane Yangとは、日本台湾二国間研究会で知り合い、2014年に共同研究を始めました。この研究会は、物理有機化学分野のPI(principal investigator)が集まり、20年ほど続けています。各研究者が研究の進展を発表するのですが、共同研究に発展することもあります。
KU Leuven (ベルギー)のProf. Steven De Feyterは、研究室に訪問してきてくれたのをきっかけに、学生が先方の研究室に数ヶ月滞在して研究を行い、論文を発表しました。
共同研究では、お互い得意なところを出し合う形が多いです。たとえば小川研で作った化合物に興味をもってもらって、測定法に興味のある研究室と共同研究をするとかの形態です。

具体的な研究内容を少し教えてください。

たとえば、Prof. Grzegorz Lisakとの共同研究については、ある種の化合物の効率的な合成法を小川研の学生がポスターで発表したところ、彼が興味をもってセンサーに使いたいといってきました。センサーに使ったらいい性能が出たので論文にしました。いろんな応用方面で興味をもってもらっていて、日本の会社などもいろんな使い方を提案してくれるので、サンプルを送ったりしています。

国際共同研究の良さを感じるのはどんな時ですか。逆に難しさを感じるのはどんな時ですか。

特に国際共同研究を意図的にねらったことはありません。日本人の研究者と知り合うのと同じです。難しいのは、きっちりした共同研究契約を結ぼうとすると、必ずどちらかの大学の事務方がごねて前に進まなくなることです。

留学生が多く在籍していますが、研究室のセミナーやジャーナルクラブは英語でやっていますか。

スタッフを含めドクター(博士後期課程)以上と、留学生は英語です。マスター(博士前期課程)の学生は、英語でスライドを作って日本語で話をしてもよいことにしています。ただ、留学生から英語で質問がくるので、そのときは横から口を出さないようにして、英語で答えられるまで待っています。難しい議論になると、途中で日本語になることもありますが、そのへんは自由です。ずっと英語でやっていると、英語で話すことがあまり苦痛にならなくなるようです。

英語で講義をされることはありますか。

日本語の大学院の授業と、大学院英語コースのSISC(Special Integrated Science Course)などと授業が重複しているので、英語の講義を希望する留学生が1名でもいたら英語で授業をやっています。講義の準備は大変ですが、一回スライドを作ってしまえば、それほど大変ではありません。
日本人学生は、あまり内容を理解してないところがあるかもしれません。嫌そうにはしませんが、英語講義とわかっていると履修者数が減る傾向はあります。
理想をいうと、大学院教育は原則英語にする。それだけで、教員、学生を全世界から集められるようになり、国際競争力が上昇すると思います。また、理系の大学院はすべて英語が当たり前になると、必然的に高校以前あるいは大学時代にもう少し真面目に英語を勉強するように思います。今は勉強してもあまり使わない。使わないと勉強もしないし、上達しない。せめて旧帝大の理系大学院は全部英語が普通としてくれると、教える側も覚悟ができます。
最初は大変だけどやったらできるなと過半数の人が思うようになれば、学生も教員もより英語を使うようになり、習熟すれば使う事が楽になるという良いサイクルが回るように思います。3年くらいは混乱するかもしれませんが、思い切ってやってしまえば、それ以降はぐんと楽になると思います。若いスタッフは、ある程度英語力を考慮にいれて採用するといいかもしれません。理想的には、学生と教員を全世界からリクルートできるようになり、日本人と留学生を同じように教育できるシステムになるのが良いと思います。今のまま、人口が減少しつつある日本人だけを対象にして教員・学生を選考していては日本の大学はどんどん競争力を失うでしょう。やがて経済的にも沈んで行けば誰も見向きをしない国になりそうです。

海外留学を希望する学生はいますか。大学・研究科のサポート体制への期待があれば教えてください。

留学を希望する学生はいますが、予算的に難しいです。学生の旅費のサポートはあると助かりますが、だんだん減ってきています。海外に出ることに抵抗がない学生は多いです。

最後に大阪大学理学研究科の学生に向けてメッセージをお願いします。

いい意味でのエリート意識をもってほしいと思います。非常に優秀な人が集まっているはずだから、その能力を活かして、自分のためだけに使うのではなく、人のためにも使う、社会を引っ張っていくのだという意識を強く持ってほしいです。
(日本の大学院は)恵まれた環境だと思います。たとえば留学生は、博士課程が終わって帰国したら二度と国際的な雑誌には論文を出せないのではないかと言います。実験しようとしても装置も何もない。もっと恵まれたところもあるでしょうが、世界的に見たら研究環境はトップに近いと思うので、そういうところにいるのだという意識を持って、更に上を目指す、全体を引っ張り上げるという意識を持って欲しいと思います。好きなことができるのがいかに恵まれているか、感じてもらいたいです。

写真:小川研究室の留学生歓迎会

写真:小川研究室の留学生歓迎会

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teacher05橋爪 章仁 教授
高分子科学専攻(高分子精密科学) 2016年7月6日インタビュー

現在の国際共同研究や国際交流活動について教えてください。

博士後期課程2年生が7月から3ヶ月の海外留学中です。研究テーマは「三次元光リソグラフィーと光消去:光開始重合と分解」でKarlsruhe Institute of Technology(ドイツ)のProf. Christopher Barner-Kowollikの研究室に行っています。彼とは、恩師同士の共同研究で知り合いになり、高分子の重合反応速度の速度定数を統一することを目的としたワークショップで彼らが来日したりして、今も交流が続いています。
私は、研究室の博士後期課程の学生に海外短期留学を勧めることにしています。留学先は、私がいくつか紹介して学生自身が選びます。学生が資金を持っている場合、先方はだいたい受け入れてくれます。実は、「づめラボガイド」という冊子(計100ページ)を作っていて、博士課程5年間のロードマップもあります。たとえば、M1でインターン、D2で海外留学など。化学科は3年生の1月から研究室に配属になるのですが、化学特別実験という科目で安全教育を含めた教育をするので、そのテキストとして作りました。研究室のルールからテクニカルライティング、安全衛生、実験の進め方、成果発表など、一通り研究室で学べるスキルをまとめたものです。

国際共同研究、国際交流活動の良さを感じるのはどんな時ですか。逆に難しさを感じるのはどんな時ですか。

留学によって、ネットワークが広がります。ネイティブスピーカーとの論文共同執筆は、非常に勉強になります。論文がアクセプトされやすいように感じます。これまで特に難しさを感じたことはありません。

国際共同研究に関する今後の計画、大学・研究科のサポート体制への期待がありましたら教えてください。

博士後期課程の学生には、今後も短期留学を行ってもらいたいと考えています。今回は、総長裁量経費によるサポートをいただくことができましたが、それに採択されなかった場合、研究科からのサポートが受けられれば助かります。

これまでの国際交流活動について教えてください。

私自身は、3回の研究留学を経験しています。いずれもアメリカで、1998年にIndiana University-Purdue University at Indianapolis (Prof. Paul L. Dubin)、2007-2008年にUniversity of Illinois at Urbana-Champaign (Prof. Steven C. Zimmerman)、2011-2012年にUniversity of California, Santa Barbara (Prof. Craig J. Hawker) へ留学しました。このうち2つについては、共同研究として論文を発表しました。
また、以前の研究室(佐藤尚弘研究室)で、魅力ある大学院教育イニシアティブ「インタラクティブ大学院教育」プログラムで、博士前期課程2年生が2週間(2006年9月)、カナダに滞在しました(Prof. Françoise M. Winnik, University of Montreal)。

理学研究科の国際交流活動に対する印象を教えてください。

特に若手教員の海外留学が難しくなっているように思います。遠慮して留学されない人が多いようです。私がイリノイに留学した時、当時は佐藤研の助教でしたが、佐藤先生は学科長でした。研究室の運営が心配でしたが、佐藤先生のご理解とご協力のもとで留学が実現しました。そのときの学生に対して、私は主にメールで指導していましたが、佐藤先生にも多くご指導いただきました。感謝しています。

理学研究科のグローバル化のためにアイデアがありましたら教えてください。

講義とセミナーの英語化、修了要件としての短期留学。
研究室の雑誌会とリサーチセミナーは、理解を深めるために日本語でやっていますが、毎週みんなで一週間の報告をする会は、隔週で英語にしています。A4用紙1〜2枚程度で、1年は50週くらいなので最終的には50〜100ページの卒業論文を書ける、という計画です。

研究者が国際的に活躍するために必要な要素は何でしょうか。

優れた研究と英語による論文発表、国際会議への出席。化学の能力に語学は関係ないと思っています。研究は中身が大事。下手な英語でもいいから論文を書いたり国際会議で発表したりした方が引用されるし、レビューで取り上げられることもあります。私は国際学会などでもわりと質問する方なのですが、それがきっかけで知り合いが増えることもあります。
以前、理学研究科長だった森島先生は、英語がご堪能だったのですが、相当な努力をされていて、英語ができて初めて科学のスタートラインに立てるとおっしゃっていました。外国語は母国語を習得したように、週に6日、一日2時間ずつ勉強する。週に一度は脳が整理する日が必要。最初はとにかく聞く、次は書き取って話す、再現する。第3段階は英英辞典で調べる、第4段階は洋画の台詞を書き取って話して英英辞典で調べる、第5段階は英字新聞を読む、という順番が良いそうです。

最後に研究者、学生に向けてメッセージをお願いします。

高分子科学専攻は、小さいけれど大阪大学の中でも重要な位置にあります。初代総長の長岡半太郎先生は、工学系の諸問題を理学的に解決したいという思いを持って阪大を創設されました。日本で唯一、理学系の研究科にある高分子科学の専攻です。
今後も世界における大阪大学理学研究科のプレゼンスを維持し、さらに高めるために、優れた研究を世界に発信できるよう頑張っていきたいと思います。

写真:左からインタビュアー卓、坂口、橋爪教授、橋爪研究室留学生の杨 艳琼(Yanqiong YANG)さん

写真:左からインタビュアー卓、坂口、橋爪教授、橋爪研究室留学生の杨 艳琼(Yanqiong YANG)さん

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teacher06柿本 辰男 教授
生物科学専攻(植物生長生理学) 2016年9月30日インタビュー

現在の国際共同研究や国際交流活動について教えてください

University of Helsinki(フィンランド)のHelariutta Lab(現在はUniversity of Cambridge, UK)とは、2001年から植物ホルモンや植物発生の研究で共同研究をしていて、現在も進行中です。メールをやりとりする中で、同じ遺伝子を別の角度から研究していることがわかり、共同研究に進展しました。あちらの学生がこちらで実験したりして、2006年にはco-first, co-correspondenceの論文をScienceとCurrent Biologyに出しました。
Swedish University of Agricultural Sciences(スウェーデン)のGöran Sandbergとは、植物ホルモンの研究で共同研究をしています。先方がホルモン動態の定量技術を持っていたので、共同研究を始めました。こちらの学生が向こうで1ヶ月、向こうの研究者がこちらで1ヶ月実験しました。2006年に、こちらがfirst, correspondedでPNASに論文を出しました。けっこういい植物の研究所で、ポスドクが一番研究しやすい研究所として表彰されたこともあるらしいです。こちらで研究できない部分を頼んだりしました。彼のお弟子さんがチェコで独立したのですが、そのラボの学生もこちらに来て、しばらくいましたね。
University of Cambridge(イギリス)のOttoline Leyserとは、共通の知り合いがいて、興味も共通していたため、最近共同研究を始めました。2015年に、向こうがfirst, correspondedの論文をThe Plant Journalに出しました。
国立成功大学(台湾)のHao-Jen Huangとは、私が向こうで集中講義をしたり、向こうからも集中講義で来てくれたりしています。学生がフロンティアラボ(大学間協定に基づく短期交換留学プログラム)で半年来て、共著論文を出しました。生物科学専攻ではわりとこの大学とつながりがあります。
最近は、中国の清華大学と共同研究をしています。ホルモン受容体のタンパク質科学で優れた技術を持っているので、会ったことはなかったのですが論文を見てこちらからコンタクトしました。タンパク質複合体とか、こちらでできない部分をやってもらっています。もともと同じような研究をやっていましたし、すぐ共同研究しましょうということになりました。
中国の陝西師範大学ともシグナル分子の研究で共同研究をしています。科研費の国際共同研究加速基金を使って、向こうの研究者がこちらで1ヶ月研究予定です。
その他にもいくつか共同研究をしています。

国際共同研究の良さを感じるのはどんな時ですか。逆に難しさを感じるのはどんな時ですか。

向こうの研究者とともに研究を楽しむことができること、相補的技術があるときに良い研究になること。競合しているときに共同研究にしてしまうこともあります。よく似たことをしている研究者同士は、お互いの研究内容を知っていたりします。両方とも同じくらいの進み具体だったら、同時に論文を出しましょうという話になることも。

国際共同研究に関する大学・研究科のサポート体制への期待はありますか。

事務手続きはわからないことがあるので、サポートが必要です。留学生を受け入れる場合も、事務手続きについては学生とのやりとりを含めてすべて事務方で、研究に関することは研究室で、と分担できれば効率的です。
それから、もう少し学生支援を多くした方がいいかなと思います。国費留学生はいいのですが、私費留学生の場合、大学のサポートはどれも単年度なので次の年を心配する人が多い。
昨年、インドネシア政府からの支援のある留学生を受け入れようとしたのですが、入試の時期が終わったところでした。留学生向けの入試は、今は年に一回ですが、国費留学生などについてはもう少し機会を増やしてもいいのではと思います。たとえば受入研究者から推薦書などを提出してもらえる場合には、個別に入試ができる形もよいかもしれません。

研究室のセミナーやジャーナルクラブは英語でやっていますか。

セミナーは、英語でできる人は英語でやっています。4年生やマスターの学生は、多くが日本語でやっています。留学生も、研究室内では馴染んでいる、違和感はないと思います。
大学院の授業はいくつか英語でやっています。英語コースの学生もいます。

研究者が国際的に活躍するために必要な要素は何でしょうか。

良い研究。英語は大事ですが、研究がうまくいっていると国際的な活動の機会が増え、研究が不調なら相手にしてもらえません。
日本人学生は、やればできるポテンシャルはある。英語をしゃべれなくても、科学の基礎はあると思います。ある程度以上伸びるためには科学全般の基礎が必要かと思います。留学生の基礎学力は様々で、その点、日本の教育はしっかりしていると思います。ただ、留学生はバイタリティーがあって自分なりの考えがしっかりしている人も多いと思います。日本人も既存の考えにとらわれず、見習うところが多いのではないでしょうか。

大阪大学の英語コースや日本の研究環境について、ご意見があれば教えてください。

学部の英語コースからそのまま阪大の大学院に進学する人は少ないようです。外国だったら奨学金がしっかりしていて、学費、生活費まで心配しないでいいところが多いです。日本だと学費も生活費も必要。大学院は外国で、と考えるのも当然でしょう。私は、一定の予算で行う大学の事業としては、学部より大学院を重点化することが得策と思っています。大学執行部の方たちにも現場の声を聞いていただきたいです。

写真:柿本研究室メンバー(前列右から3番目が柿本教授)

写真:柿本研究室メンバー(前列右から3番目が柿本教授)

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国際交流について

外国人留学生数

(2022年6月1日現在)
地域 数学 物理 化学 生物科学 高分子科学 宇宙地球 非正規生 合計
学部 前期 課程 後期 課程 学部 前期 課程 後期 課程 学部 前期 課程 後期 課程 学部 前期 課程 後期 課程 前期 課程 後期 課程 前期 課程 後期 課程 学部 大学院
アジア 2 1 1 13 14 12 12 17 33 5 17 19 3 3 2 2 4 2 162
中東 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 2
北米 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 2
南米 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 3
オセアニア 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1
ヨーロッパ 0 0 0 1 0 4 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1 0 5 12
アフリカ 0 0 0 0 0 0 0 0 3 1 0 1 0 0 0 0 0 0 5
総計 2 1 1 15 14 17 12 18 37 6 18 22 3 3 2 3 6 7 187

外国人研究者等受入者数

(2021年10月~2022年3月)
地域 受入 人数
アジア 17
北米 3
ヨーロッパ 13
中東 1
合計 34

交流協定締結大学一覧:部局間協定

(2024年4月1日現在)
国名 相手大学等名 締結年度
アジア
インド タタ基礎研究所(自然科学部) 2009
インド インド工科大学ボンベイ(理学部) 2011
インド ムンバイ大学(理学部) 2016
インドネシア バンドン工科大学(数学自然科学部) 2015
インドネシア パジャジャラン大学(数学自然科学部) 2017
インドネシア ブラウィジャヤ大学(数学自然科学部) 2023
韓 国 インハ大学(理学部) 2011
タ イ スラナリー工科大学(理学研究科) 2012
タ イ マヒドン大学(理学部) 2017
タ イ チェンマイ大学(理学部) 2017
タ イ チュラロンコン大学(理学部/石油 石油化学カレッジ) 2019
台 湾 国立台湾大学(理学院・生命科学院) 2009
台 湾 中央研究院(遺伝子研究センター) 2016
台 湾 国立清華大学(理学部) 2018
台 湾 国立陽明交通大学 (理学院) 2021
中 国 蘭州大学(物理科学技術学院) 2016
中 国 南京大学(物理学院) 2019
中国 中国科学院近代物理研究所 2023
フィリピン デ・ラ・サール大学(理学部) 2024
ベトナム ホーチミン市国家大学(自然科学大学) 2010
ベトナム ホーチミン市国家大学(工科大学)(応用科学部) 2018
マレーシア マレーシア工科大学(理学部) 2009
中 東
トルコ イスタンブル大学(理学部) 2009
オセアニア
オーストラリア モナシュ大学(理学部) 2017
オーストラリア ロイヤルメルボルン工科大学 2019
北 米
アメリカ ケンタッキー大学(理学部) 2017
アメリカ メリーランド大学 2017
アメリカ プリンストン大学 2019
カナダ ブリティッシュ・コロンビア大学(理学部) 2006
ヨーロッパ
イギリス インペリアル・カレッジ・ロンドン(自然科学部) 2006
イタリア ジェノア大学 2018
イタリア ナポリ・フェデリコ二世大学 2019
オランダ アインホフェン工科大学(化学部・化学工学部/生体医療工学部) 2006
オランダ トゥウェンテ大学(電子工学・数理計算機科学研究科及び同学部) 2018
カザフスタン アルファラビ・カザフ国立大学(物理工学部) 2013
ドイツ フリードリッヒ・ヴィルヘルム大学ボンとケルン大学によるボン・ケルン統合物理・天文大学院 2011
ドイツ ブレーメン大学(物理・電気工学科) 2012
ドイツ ドレスデン工科大学(理学部) 2014
ドイツ フリードリッヒ・シラー大学イェーナ 2021
フィンランド ユヴァスキュラ大学(数学科学部) 2010
ベラルーシ ベラルーシ国立大学(物理学部) 2015
ルーマニア ゲオルグ アサキ ヤシ工科大学 2023
アフリカ
南アフリカ 南アフリカ天文台 2017