理学部では、多様な教育的背景をもった入学希望者の中から、次のような学生を受け入れます。特に、一見自明に思える事柄に対しても「なぜ?」という疑問を抱いてその根源的理由を探ろうとする好奇心旺盛な人達を歓迎します。
数学は、古い歴史を持ち、多くの先達の努力によって目覚ましい進展を遂げ、現在もなお、絶え間なく発展している学問です。さらにそれは、近世以来、自然現象を記述する基本的な枠組みとなり、現在では、物理学・化学をはじめとする自然科学、工学・情報学などの先端科学技術から、さらに社会科学にいたるまでの諸分野の基礎を担う重要な役割を果たしています。
数学の学習においては、計算に習熟し、個々の公式や定理を暗記して、それらを応用することだけが重要なのではありません。公式や定理が得られた過程で、どのような見方や考え方がなされたかをよく理解し、それらの本質が何かを見抜くことが最も大切です。
例えば、多くの物事は、外見は異なってもその本質において共通であることはしばしばであり、一旦本質がわかると、未経験の事態に当たっても見通しをもって対処することが可能になります。そして、物事の本質に迫るためには、様々な事柄について、一般化し、また抽象化して考える能力、順序立てて論理的に考える習慣が大切です。これは正に数学における思考法そのものです。一方、あるものの本質が見えてくると、それに続いて多くの疑問や予想が生じてきます。実際、これまで数学の進歩は、このような疑問や予想を追求する先人の好奇心と努力の中から生まれてきたのです。
現在も未解決のリーマン予想や、ごく最近解決されたポアンカレ予想など、100年以上も数学者の挑戦を拒み続けてきた問題もあり、これらのさらなる研究は、数学の今後の飛躍的な発展への契機をはらんでいます。
このような数学の世界に熱意と興味を見い出せる学生を特に歓迎します。
物理学は様々な自然現象の背後に潜む基本的な法則を追求する学問です。電波や原子・電子の発見は、私達の世界観を一変しただけでなく、その応用技術は私達の生活を限りなく豊かにしました。物理学的な考え方はすべての科学技術の基礎となっています。 物理学科では、自然現象に「なぜ?」という素朴な疑問を抱き根本を探りたい人、また物理学的なものの見方・考え方を身に付けて社会のいろいろな分野で活躍したい人を受け入れて、物理学の新しい地平を切り開く人、また物理学の手法を身に付けて他分野に進出する人を育てています。そのためには、基本から一つ一つ学問を積み重ねていく地道な勉学が求められます。
物理学科の新入生は、主体的な学習方法を身に付けるために、相対性理論や量子力学などの少人数セミナーに参加します。さらに、好奇心を持って学べるように、第一線の研究者による講義が提供されます。また、様々な講義・演習・実験などにより、物理学の基礎を学び自ら課題を設定し解決する力を養います。
物理学科における教育が有意義なものとなるように、入学者選抜試験では高等学校で習う理科に関する基礎知識を要求しています。後期日程ではさらに問題を掘り下げる能力に重点を置いています。また、理科の他に物理学を記述する言葉である数学、研究交流の共通語である英語を重視しています。
化学科では、自然界の現象を分子を通して観察し、物質の構造や性質及び変化を分子・原子・電子レベルで解明したり、新しい物質を創り出したりする基礎研究を行っています。さらに、そこで得られた発見を独創的な研究や考え方に発展させて、新たな科学の分野を開拓することを目指しています。多くの人々の素朴な好奇心や偶然の発見によって得られた化学の成果が、現代の生命科学や先端科学技術の目覚ましい発展を支えています。
化学科では、自然科学の基礎及び化学の各分野を体系的に学ぶと同時に、最先端の研究に触れることができるカリキュラムを用意しています。これによって、整理され確立された知識以外に、未解明の重要な問題が沢山あることを認識できるでしょう。このように化学を基礎から理解した人は、様々な問題の解決にも力を発揮し社会に貢献しています。
未来の科学を支えるために、独自に考える力と自然に対する好奇心を持ち、発見の感動を味わいたい学生を求めています。
生物科学は、21世紀の学問といわれ、爆発的に発展しています。ヒトゲノム計画に代表される巨大プロジェクトが推進され、今や1000種を越える生物のゲノム、設計図が明らかにされました。更にナノサイエンスやナノテクノロジーの超微細技術を応用した様々な研究がすすめられており、生物科学は大きく変わろうとしています。例えば、膨大なゲノム情報をもとにして、いままで形態や化石から推定されていた生物の進化の歴史(系統樹)が書き換えられようとしています。
また生物の基本単位である細胞については細胞内の1分子の働きが調べられ、また生物の機能を担う蛋白質に関しては、いまや原子レベルでの研究が行われています。この様な多様な発展に対応するため、生物科学科は募集人数を25人から55人と大幅に増やしました。この増員には大きな目的が2つあります。
一つは、見通すことが困難となっている生物科学全体を幅広く教育することです。これには従来の生物科学科で行っていた教育をさらに深化させた生物科学コース(25人)が対応します。
もう一つは、これからの生物科学をさらに発展させるために、数学、物理学、化学との境界領域を重点的に教育することです。これには新しい生命理学コース(30人)が対応します。境界領域が重要であることは生物科学の発展の歴史をみれば当然の事なのですが、これからは今まで以上にこの領域の必要性があると考えられます。生物科学科で学ぶことにより、生物学研究者や生命理学研究者はもとより、医薬や食品などの開発に関わる研究者・技術者、生物学教員、等への様々な道が拓かれることになります。
生物の生きる仕組みに、なぜという素朴な疑問を持つ人から、生物学を応用して社会に役立つことを開発したい人まで、卒業後の進路として発展する生物学や生命学の様々な分野で活躍したいと考える人が勉学するのに、この拡充された生物科学科は最も適したところです。
生物の進化、発生、などの生物学や、生命の基本的な単位である細胞の仕組みを学ぶ細胞生物学、生物を構成する分子であるタンパク質やDNAの構造や働きを学ぶ生化学、分子生物学を学ぶことができます。
また、研究対象も微生物、植物、動物やそれぞれの細胞など幅広く学ぶことができます。こうした生物学の多くは実験科学です。そのため、このコースでは学部低学年から高学年に至るまで多くの実験コースが組まれています。また、現在の生物科学は化学や物理学の知識が広く必要であり、低学年では理学部共通の数学から化学、物理学を勉強します。このコースで目指すのは、現在の生物学を継承し発展させることができる人材の育成です。
生物の生きる仕組みを分子レベルで理解するためには、これまで以上に数学、物理学、化学の知識が必要になっており、生物学はますます複合的学問領域としての色彩を強めています。
このコースは、こうした発展する生命科学の現状により、対応することができる人材を育成する目的で新設されました。したがって、生物科学コースにくらべて、数学、物理学、化学などの基礎を学習する時間がより多く設定されています。数学、物理学及び化学がよくわかる生物学研究者や、生物学も理解できる物理学研究者、化学研究者及び数学研究者を育てたいというのが、このコースの目標です。入試も物理と化学を必須とします。このコースで勉強する人は、新しい時代の要請にあった先進的人材となるでしょう。