東京大学 生産技術研究所の張 奕勁 助教と町田 友樹 教授らの研究グループは、北陸先端科学技術大学院大学 ナノマテリアル・デバイス研究領域の大島 義文 教授および高村 由起子 教授の研究グループ、大阪大学大学院 理学研究科の越野 幹人 教授の研究グループと共同で、原子層物質の人工ツイスト二層構造において一次元の周期性を持つモアレ超格子が実現できることを明らかにしました。
本研究では、二テルル化タングステン(WTe2)の原子層二枚を使用し、それぞれの結晶方位に角度差(ツイスト角)を付けた状態で人工的に重ね合わせた構造(ツイスト二層構造)を作製し、透過型電子線顕微鏡(TEM)を用いて原子の配列パターンを直接観察しました。一般的にツイスト二層構造で出現するモアレ超格子内の原子配列パターンは二次元の周期性を持って変化しますが、本研究では特定のツイスト角において配列パターンの変化が一次元的になる、すなわち周期性が一方向のみになることを世界で初めて示しました。また、本モアレ超格子が従来のモアレ超格子とは異なる原理で形成されていることを理論的に突き止めました。一次元性による母物質の物性変調に伴う新奇物性探索の新しい舞台になることが期待されます。
透過型電子線顕微鏡を用いたツイスト二層WTe2の原子像観察
(a)WTe2原子層の模式図。a軸方向とb軸方向で周期性が異なる。(b,c)WTe2原子層二枚をツイスト角62度(b)および58度(c)でツイスト積層させた構造。単独の原子層が持つ周期性と異なる一次元的な周期性が出現する。(d) 試料構造および実験の模式図。h-BNは試料の保護層。(e,f)ツイスト角62度(e)および58度(f)で作成したツイスト二層WTe2試料の原子像。白いスケールバーは10 nm(ナノメートル)。(g,h)62度(g)および58度(f)ツイスト試料の電子回折像。緑と茶色の点がそれぞれの原子層の構造の周期性を示す回折スポット。赤枠(e)と青枠(f)で示された回折スポットのペアがモアレ超格子の周期性を表す。どちらの場合も回折スポットのペアが平行に並んでいることから、モアレ超格子が一方向のみに周期性を持っていることがわかる。青いスケールバーは2 nm-1(ナノメートルインバース)。
本件に関する問い合わせ先
大阪大学大学院理学研究科物理学専攻
教授 越野 幹人 (こしの みきと)
E-mail:koshino@phys.sci.osaka-u.ac.jp