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研究トピックス
2021/09/27 投稿

合成アルカリゲネス菌リピドAの優れたアジュバント活性を証明 ―有効性・安全性の高い次世代ワクチンの開発に光―

新型コロナウイルス感染症の発生により、感染症対策としてのワクチンの重要性が改めて認識されている中、今後の新興・再興感染症の対策において、安全性と有効性を兼ね備えたワクチン開発を進めることが急務となっています。そのためには、ワクチンの効果を最適化できる優れたアジュバントの開発が必要です。

本研究科深瀬浩一教授の研究グループは、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチン・アジュバント研究センターの國澤純センター長(ワクチンマテリアルプロジェクトリーダー併任)の研究グループ、東京大学の清野宏特任教授の研究グループとの共同研究で、ヒトやマウスの腸管関連リンパ組織の内部に共生し、過剰な炎症を誘導することなく適度な免疫活性化を行うアルカリゲネス菌(Alcaligenes faecalis)に着目した研究から、菌体成分であるリピドAの化学合成法を確立し、アジュバントとして用いた際の免疫系に対する作用を調べました。その結果、注射型ワクチンとしてだけでなく粘膜免疫の誘導が可能な経鼻型ワクチンにおいても、炎症などの副反応をほとんど起こさずにワクチン抗原に対する免疫応答を高めることができるアジュバントとしての優れた効果が示されました。

この度、アルカリゲネス菌リピドAの合成技術が、株式会社ペプチド研究所(※)へ導出され、研究用試薬として販売されることになりました。これにより、アルカリゲネス菌リピドAのアジュバントとしての実用化が促進されると共に、研究用試薬としてワクチンやアジュバントに関する学術研究に貢献することで、感染症対策など国民の健康増進につながることが期待されます。

化学合成したアルカリゲネス菌リピドAの性質と利点

  • マウス樹状細胞とヒト末梢血単核細胞を活性化できる
  • 注射型と経鼻型の二つのタイプのワクチンに使用可能である
  • IgG抗体や分泌型IgA抗体だけではなく、Th17細胞も誘導できる
  • 炎症などの副反応が少なく、安全性に優れている
  • 単一化合物の化学合成品であるため、天然由来の不純物を含まない

※株式会社ペプチド研究所「アジュバント/ワクチン研究に期待されるリピドA」


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本件に関する問い合わせ先

大阪大学大学院理学研究科 化学専攻
教授 深瀬 浩一(ふかせ こういち)
TEL: 06-6850-5388   FAX: 06-6850-5419
E-mail: koichi(@)chem.sci.osaka-u.ac.jp