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研究トピックス
2021/09/10 投稿

イソギンチャクの体の構造に“相称性の二刀流”を発見-左右相称と放射相称の両方をこなす体づくりの数理モデル-

理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター形態進化研究チームのサフィエ・エスラ・サルペル訪問研究員(日本学術振興会特別研究員-PD、大阪大学大学院招へい研究員)、平井珠美テクニカルスタッフ、倉谷滋チームリーダー(開拓研究本部倉谷形態進化研究室主任研究員)、大阪大学大学院理学研究科の藤本仰一准教授らの共同研究グループは、「タテジマイソギンチャク」に左右相称の個体と放射相称の個体が混在することを発見し、両者の体づくりを共通の仕組みで説明する数理モデルを提案しました。

本研究により、現生のほとんどの動物に共通する左右相称性と、進化において祖先的な動物である刺胞動物門(クラゲ、イソギンチャクなど)で見られる放射相称性の体づくりの仕組みの関係や、相称性がどのように進化してきたかについての理解が深まることが期待できます。

これまで、左右相称性と放射相称性が同じ生物で現れることはないとされてきました。しかし今回、共同研究グループは、タテジマイソギンチャクが左右相称と放射相称の2タイプの個体を持つ、いわば“相称性の二刀流”をこなす珍しい種であることを発見しました。体内構造を解析した結果、イソギンチャク特有の器官である「管溝」が、左右相称個体では一つ、放射相称個体では二つあることが分かりました。さらに数理モデルを用いたシミュレーションから、個体の相称性は再生の初期段階における管溝胃嚢の有無により決まることが示されました。

本研究は、科学雑誌『Zoological Letters』オンライン版(9月6日付)に掲載されました。

図:動物界で見られる相称性のタイプ
脊椎動物や節足動物など、体の基本構造が左右相称である動物は左右相称動物と総称される。一方、クラゲ、イソギンチャク、サンゴなどが属する刺胞動物門では、多くの種が放射相称であるが、一部に左右相称の種を含む。なかでも本研究で見いだしたタテジマイソギンチャクは、種内にいずれかの相称性を持つ個体が混在する。点線は対称軸を指す。


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〈共同リリース機関HP〉

本件に関する問い合わせ先

大阪大学 大学院理学研究科
准教授 藤本 仰一(ふじもと こういち)
TEL:06-6850-5822
E-mail:fujimoto@bio.sci.osaka-u.ac.jp