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研究トピックス
2021/05/28 投稿

からみあう電子たち ― 量子液体における三体相関の検出

東京大学大学院理学系研究科および大阪大学大学院理学研究科の小林研介教授は、秦徳郎(研究当時:大阪大学大学院理学研究科大学院生、現在:東京工業大学理学院物理学系助教)、荒川智紀(研究当時:同理学研究科助教、現在:産業技術総合研究所計量標準総合センター)、Meydi Ferrier(研究当時:同理学研究科特任研究員、現在:パリ南大学講師)、小栗章(大阪市立大学大学院理学研究科/同大学南部陽一郎物理学研究所教授)、寺谷義道(同大学大学院理学研究科特任助教)、阪野塁(東京大学物性研究所助教)らとの国際共同研究により、微細加工技術を用いて作製された人工原子中の量子液体における電流を精密に測定することによって、電子が量子力学的に絡み合う尺度となる三体相関を検出することに成功しました。

数多くの粒子が量子力学的な相互作用を及ぼし合うことによって形成される量子液体は、粒子一個からは想像もつかないような、多彩な振る舞いを見せます。本研究では、そのような量子液体の一種である局所フェルミ液体の非平衡状態における振る舞いを明らかにしました。極小の電子回路内に作られた人工原子に、近藤効果によって量子液体を生成し、その振る舞いが3つの粒子の絡み合い(三体相関)によって決定されていることを実証しました。

このような研究は、非平衡状態にある量子多体現象を定量的に理解する鍵となります。

本成果は、2021年5月28日(金)午後6時(日本時間)に英国科学誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

図:(a) 実験に用いた試料の電子顕微鏡写真。黄色い点線で囲まれた領域に見える白い筋が、カーボンナノチューブからなる人工原子です。この人工原子にただひとつの電子を閉じ込め、それによって生じる近藤効果によって、量子液体を生成しました。この量子液体はソース電極とドレイン電極の間に閉じ込められています。この量子液体の電気伝導度を精密に測定しました。(b) 量子液体の模式図。たくさんの粒子(電子)から構成されています。粒子2つの間に生じる相互作用(二体相関)と、粒子3つの間に生じる相互作用(三体相関)を、青色と赤色で模式的に表しました。

 

本件に関する問い合わせ先

<研究に関すること>
東京大学 大学院理学系研究科 附属知の物理学研究センター/物理学専攻
教授 小林 研介(こばやし けんすけ)
E-mail:kensuke@phys.s.u-tokyo.ac.jp