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研究トピックス
2021/04/30 投稿

細胞核の「丈夫な構造物」という新機能の発見―内臓を左右非対称な”形”にする細胞で一番「堅い」特性―

大阪大学大学院理学研究科大学院生の申 東善さん(博士後期課程)、稲木美紀子講師、松野健治教授らの研究グループは、細胞の核が整列して並ぶことが、内臓が左右非対称な形になるために必要なことを世界で初めて明らかにしました。
細胞の中に存在する細胞内小器官のうちで最大なのが核です。核には、遺伝子であるDNA(デオキシリボ核酸)が存在するため、これまで、遺伝子の貯蔵が核の役割であると考えられてきました。

今回、本研究グループは、ショウジョウバエの消化管を覆う筋肉細胞の核が、前後方向に整列し、密集して並ぶことが、消化管の形が正常に左右非対称になるために必要なことを明らかにしました(図)。ヒトの内臓器官と同様に、ショウジョウバエ消化管も、左右非対称な形をしています。筋肉細胞の核が整列しなくなる突然変異では、内臓の左右非対称性がランダムになってしまいます。核は、細胞の中で最も硬い構造であることから、核が整列することで支柱のような役割を果たしていると考えられます。例えて言えば、整列した核はテントのポールのように消化管の構造をささえながら、左右非対称な構造の変化を助けていることになります。

これらの研究によって、核の機能は遺伝子の貯蔵だけではなく、物理的な強度を利用して内臓の形態変化を制御していることを解明しました。この結果は、再生器官の形態を制御する技術として応用できることが期待されます。

本研究成果は、英国科学誌「Development」に、4月29日(木)20時(日本時間)に公開されました。

図:核は物理的な強度が高いため、整列すると支柱の様にはたらく。この支柱は、消化管の構造を支え、左右非対称な形の変化を助ける。


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本件に関する問い合わせ先

大阪大学 大学院理学研究科
教授 松野 健治(まつの けんじ)
TEL:06-6850-5804 FAX: 06-6850-5805
E-mail: kmatsuno@bio.sci.osaka-u.ac.jp