1. HOME >
  2. 研究トピックス >
  3. 光で繊毛運動を調節する新規タンパク質の発見
研究トピックス
2021/03/01 投稿

光で繊毛運動を調節する新規タンパク質の発見

繊毛は、細胞から生えている毛状の構造です。私たちの体内にも存在し、精子の運動や、脳、気管、輸卵管などの上皮組織の水流発生を担っています。また、気管などの呼吸器官では、ウイルスや細菌を排除するために重要です。繊毛の中で力を生み出し、運動を起こしているのが、分子モーターであるタンパク質複合体「ダイニン」です。ダイニンの働きは、化学物質や光などの細胞外からの刺激によって変化することが知られています。本研究では、海産動物であるホヤと単細胞緑藻類であるクラミドモナスを用いて、繊毛のダイニンに結合してその動きを調節する、新規の光応答性タンパク質を発見しました。

今回発見されたタンパク質は、青色光の受容に関与する領域を持ち、ダイニンのモーター部分と結合することが分かりました。生物に強い光が当たると、細胞内に活性酸素などが発生し毒性を示します。このため、多くの生物は強い光を避ける傾向があります。クラミドモナスに強い光を当てると、光を避ける行動が見られ、それが長い時間維持されます。一方、このタンパク質を欠いたクラミドモナス変異体は、一時的に強い光を避けますが、すぐに慣れて、再び光に寄っていくようになりました(順化)。つまり、本タンパク質は、ダイニンの動きを調節して、光に順化してしまうのを防止する役割があると考えられます。

今後、繊毛運動の光調節機構の詳細を明らかにすることにより、将来的には、繊毛運動を光で人為的に調節できる可能性も期待されます。

図:暗室で行った実験の様子(上図)と、強い青色光に対するクラミドモナスの反応(下図)。
シャーレ内のクラミドモナスに、矢印の方向から強い青色光を当てると、最初は、野生株、DYBLUP欠損株ともに光源から離れるが、欠損株では順化が起き、60分後にはほとんどが再び光源に向かう。


Related links

〈共同リリース機関HP〉

本件に関する問い合わせ先

大阪大学 大学院理学研究科 生物科学専攻
教授 昆 隆英(こん たかひで)
TEL:06-6850-5435
E-mail: takahide.konat bio.sci.osaka-u.ac.jp