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研究トピックス
2020/03/17 投稿

宇宙線電子加速の「はじめの一歩」

宇宙空間から絶えず地球に降り注ぐ超高エネルギーの荷電粒子(宇宙線)の起源は宇宙物理学における長年の謎になっており、これまでにも宇宙線の加速メカニズムに関するさまざまな研究が続けられてきました。特に宇宙線の電子に関しては、初期に光の速さと同程度の速度を持った宇宙線の「種」となる電子を加速するメカニズムは知られていましたが、そのような「種」を作るメカニズムは知られていませんでした。すなわち、宇宙線加速の言わば「はじめの一歩」が、最初にして最大の難関であったのです。

東京大学大学院理学系研究科の天野孝伸准教授らのグループは、NASA のMMS 衛星の観測データを用いることで、この問題の解決に大きく迫ることに成功しました(図参照)。本研究グループは最近新たな理論モデルを提唱していましたが、このモデルがMMS衛星が観測した地球近傍の衝撃波の観測事実を矛盾なく説明できることが示されました。さらに、このモデルを遠く超新星残骸衝撃波に適用することによって、宇宙線加速の「はじめの一歩」の問題を理論的に説明できることが分かりました。この知見を用いることで、将来的には電子のみならず陽子(水素の原子核)も含めた宇宙線加速の全体像の理解が進展することが期待されます。

なお、本研究は天野孝伸准教授のほか、加藤拓馬博士課程大学院生、北村成寿特任研究員、星野真弘教授(以上,東京大学大学院理学系研究科)、松本洋介特任准教授(千葉大学大学院理学研究科)、齋藤義文教授(JAXA 宇宙科学研究所)、横田勝一郎准教授(大阪大学大学院理学研究科)を含めた国際研究グループによる共同研究です。

本研究成果は2月14日付でPhysical Review Letters に掲載されました。

図:本研究の概念図。本研究では地球からの距離が数万kmの距離にほぼ定常に存在する衝撃波の人工衛星による観測データを解析しました。一方でこの結果もとにすることで、数千光年離れた超新星残骸衝撃波での宇宙線電子加速の「はじめの一歩」が、理論的に説明できることが分かりました。


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