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研究トピックス
2019/11/28 投稿

サイズ進化の法則を発見-性成熟のタイミングと体の大きさの密接な関係-

理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター成長シグナル研究チーム(研究当時)の廣中謙一客員研究員、西村隆史チームリーダー、大阪大学大学院理学研究科の藤本仰一准教授らの共同研究チームは、昆虫の種ごとの個体の最終的な体の大きさ(最終サイズ)を決める重要な要因が、「性成熟の開始に必要な最低の大きさ(臨界サイズ)」であることを明らかにしました。
 本研究成果は、幼若期から性成熟を伴う最終成長期への発生過程と体のサイズの進化との関係を解明する手掛かりとなり、今後は完全変態昆虫以外でも、その生物に特有の生活史を組み込んだ適切なエネルギー配分モデルを構築することで、生物のサイズの進化における普遍的な原理の発見が期待できます。
 今回、共同研究チームは、ショウジョウバエ属の9種を用いて、種ごとに異なる最終サイズ(体重)が、幼虫期において変態の引き金となる臨界サイズ(体重)に比例することを発見しました。観察された最終サイズと臨界サイズの種間変動パターンは、幼体組織と成体組織の最適な成長バランスを求める数学モデルで予測されたパターンとよく一致したことから、臨界サイズへの到達がこれら組織間のエネルギー配分を制御する「スイッチ」として機能していると考えられます。さらに、臨界サイズと最終サイズの比例関係は「成長率」と「最終成長期間」の間に反比例関係があることで説明できること、そして最終成長期間の種間差は性成熟をつかさどるステロイドホルモン活性の時間パターンに由来することを発見しました。これらの発見は、最終サイズを臨界サイズに比例させる仕組みが進化的に保存されていることを示唆しており、「体サイズの進化は、臨界サイズの進化を通してしか起きない」という新たなシナリオが浮かび上がってきました。
 本研究成果は、米国のオンライン科学雑誌『iScience』(10月25日号)に掲載されました。

図 実験で用いた9種のショウジョウバエ


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本件に関する問い合わせ先

大阪大学 大学院理学研究科
准教授 藤本仰一(ふじもと こういち)
TEL:06-6850-5822 FAX:06-6850-5822
E-mail: fujimoto@bio.sci.osaka-u.ac.jp