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研究トピックス
2019/09/19 投稿

医薬品などの生産に欠かせない化学反応制御のための新方法論。 生体にそなわる抗体の仕組みをいかした人工金属酵素で、立体選択的な炭素-炭素結合形成反応に成功

大阪大学大学院理学研究科の安達琢真大学院生博士後期課程(研究当時)、山口浩靖教授、大阪大学産業科学研究所の原田明特任教授(常勤)の研究グループは、モノクローナル抗体を用いた人工金属酵素によって炭素-炭素結合を形成することに初めて成功しました。モノクローナル抗体に遷移金属錯体を導入した人工金属酵素を用いてエナンチオ選択的なフリーデル・クラフツ アルキル化反応を実現することに成功しました。
ビナフチル化合物(BN)の軸不斉を認識するモノクローナル抗体と、ビナフチル化合物に似た構造の配位子 (1,1’-ビ-イソキノリン, BIQ)を有する銅錯体を複合化することにより人工金属酵素を創製しました(図)。金属錯体のみを用いて触媒反応を行うと、生成物は人間でいう右手と左手のような関係にある立体異性体の混合物が得られ、立体選択性はまったく見られません。一方、今回開発した抗体と銅錯体からなる人工金属酵素は極めて高いエナンチオ選択性でフリーデル・クラフツ アルキル化反応を触媒することがわかりました。軸不斉を認識するモノクローナル抗体が触媒活性点周辺にもたらす環境が触媒反応の立体選択性を制御していると考えられます。本研究成果はモノクローナル抗体を用いた人工金属酵素によって炭素-炭素結合を形成した世界初の例です。また、モノクローナル抗体を用いることにより、従来はキラル構造の不安定さのために活用が困難だったBIQを配位子とする金属錯体を不斉触媒として活用することにも成功した初めての例となります。今後、医薬品を始めとする精密な立体制御が必要となる有用物質を生産するための方法論として活用できると期待されます。
本研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」に、9月19日(木)午後6時(日本時間)に公開されました。

図 軸不斉認識抗体を用いた人工金属酵素の設計。
軸不斉を認識するモノクローナル抗体に金属錯体を取り込むことで触媒活性点の周辺にキラル環境を誘起する。


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本件に関する問い合わせ先

大阪大学 大学院理学研究科 教授 山口浩靖(やまぐち ひろやす)
TEL:06-6850-5460  FAX: 06-6850-5460
E-mail : hiroyasu@chem.sci.osaka-u.ac.jp