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研究トピックス
2019/09/03 投稿

分子を用いた脳型情報処理デバイスの実現へ基礎特性を解明 ―化学結合制御に基づく非線形電気特性を実証―

大阪大学大学院理学研究科の大塚洋一助教、西嶋知史氏(研究当時:大学院生(博士前期課程))、松本卓也教授らの研究グループは、分子を介した非線形電気特性の発現のために、分子と電極間の化学結合の制御が重要であることを明らかにしました。
我々の脳は低いエネルギーで効率的に情報処理を行うことができます。脳の神経細胞ネットワークでは、一定以上の強さの刺激に対して電位パルスが非線形的に発生し、伝搬することが知られています。分子エレクトロニクスの研究分野では、脳型の優れた情報処理を実現するために、電圧の印加量に対して電流値が非線形的に変化する分子デバイスの構築が求められています。そのためには、分子固有の電子状態や、分子と電極の化学結合をデザインし、分子と電極間の電流量を調整するための仕組みを理解し、実現することが極めて重要です。
今回、微小な電極間に分子と金ナノ粒子が直列に接続された分子デバイス(金ナノ粒子ブリッジジャンクション)を用いて、分子と電極間の化学結合を制御することにより、一定の大きさの電圧印加に対して分子の電子状態を介した電気が流れる、共鳴トンネル伝導を誘起し、閾値電圧を有する非線形電気特性が実現することを発見しました(図)。
本研究成果は、明確な非線形電気特性を有する分子デバイスをデザインする上で有用な知見であり、分子の電子状態に基づく特異な非線形電気特性の実現と、それを活用した脳型情報処理デバイスへの展開が期待されます。本研究成果は、米国科学誌「ACS Applied Materials & Interfaces」に、6月25日に公開されました。


(a)金ナノ粒子ブリッジジャンクションの電子顕微鏡写真。ルテニウム錯体が固定された金電極間に、金ナノ粒子が架橋している様子を示す。(b)ルテニウム錯体を介した共鳴トンネル伝導の模式図。ルテニウム錯体は金電極上のアルカンチオール分子の上に固定されており、金電極とルテニウム錯体は電子的にデカップリングされている。(c)非線形電気特性の温度依存性。±1Vを境に、電流値が大きく変化することが、幅広い温度領域にわたって計測された。


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本件に関する問い合わせ先

大阪大学 大学院理学研究科 教授 松本卓也(まつもとたくや)
TEL:06-6850-5401   FAX: 06-6850-5403
E-mail: matsumoto-t@chem.sci.osaka-u.ac.jp