1. HOME >
  2. 研究トピックス >
  3. 胎生魚がお腹の子供に与える栄養素を解明 ―哺乳類とは異なったしくみでお腹の子供を育てる―
研究トピックス
2019/10/15 投稿

胎生魚がお腹の子供に与える栄養素を解明 ―哺乳類とは異なったしくみでお腹の子供を育てる―

胎生とは、母親がお腹の中で子供を育ててから出産する生殖様式です。ヒトの妊娠からイメージされるように、哺乳類の大部分が胎生であることはよく知られていますが、実は魚類、両生類、爬虫類にも胎生種が存在します。しかし、これらの動物種が胎盤やへその緒を持つことは稀であり、進化の道のりで哺乳類とは別に胎生を獲得したと考えられています。このため、哺乳類とは違った仕組みでお腹の子供を育てていると考えられますが、その実体については謎が多く、とくに母親がお腹の子に与える栄養素についての実験的な実証はなされていませんでした。
京都大学ウイルス・再生医科学研究所 飯田敦夫 助教(現:名古屋大学助教)を筆頭とする東洋大学、大阪大学、東北大学、名古屋大学、城西大学の共同研究グループは、グーデア科胎生魚である Xenotoca eiseni(和名:ハイランドカープ)を用いて、魚類に広くみられる卵黄栄養タンパク質であるビテロジェニンが、母親からお腹の子供に供給されていることを見出しました。面白いことに、ヒトを含む胎生哺乳類 (胎盤をもつ真獣類と有袋類の総称) では、ビテロジェニンの遺伝子そのものが失われています。すなわち胎生魚類は、哺乳類と明らかに異なるしくみでお腹の子供を育てていると考えられます。
胎生は「赤ちゃんを産む」という点で魚類でも哺乳類でも共通した生命現象ですが、お腹で子を育てる仕組みは、使われている遺伝子を含め、生物ごとに異なる進化を遂げた可能性があります。
本研究は、哺乳類以外の胎生動物の中でも小型で飼育や繁殖が容易なX. eiseniを実験材料としてもちいた点に成功の秘訣があり、今後も胎生のしくみや多様性の理解がさらに進むと期待されます。
本研究成果は、2019年10月8日に国際学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」にオンライン掲載されました。

図 本研究の概要図
(名古屋大学 飯田敦夫博士より提供)

本研究成果の詳細はこちら(京都大学のHP)

Related links

本件に関する問い合わせ先

大阪大学大学院理学研究科
助教 小沼 健 (おぬま たけし)
TEL: 06-6850-6760 FAX: 06-6850-5472
E-mail: takeo@bio.sci.osaka-u.ac.jp