1. HOME >
  2. 研究トピックス >
  3. 断層に含まれる有機物が地震発生メカニズムに影響している!?
研究トピックス
2019/05/27 投稿

断層に含まれる有機物が地震発生メカニズムに影響している!?

廣野哲朗准教授(大阪大学理学研究科)と金木俊也博士(研究当時・大阪大学理学研究科、現・日本学術振興会 学振特別研究員PD、研究機関は京都大学防災研究所)は、海溝型地震を引き起こすプレート沈み込み帯の断層中に含まれる有機物に着目し、地震時の断層滑りを模擬した室内摩擦実験を行うことで、有機物の熱化学反応が海溝型地震の滑り挙動に影響を及ぼす可能性があることを解明しました。
これまで海溝型地震時の断層滑り挙動には、プレート沈み込み帯に豊富に存在する摩擦強度の弱い粘土鉱物が重要な役割を果たしていると考えられており、断層に含まれる有機物およびその熱熟成反応が及ぼす影響は解明されていませんでした。
今回、廣野准教授と金木博士は、有機物を多く含む断層での地震を模擬した室内実験を行うことで、機物の熱熟成反応が断層の摩擦強度や地震時の破壊伝播過程に影響を及ぼす可能性があることを明らかにしました。室内実験の結果、有機物の石炭化が進行するにつれて、ピーク摩擦係数が低下します。プレートの沈み込みに伴ってプレート上の地層は深部に持ち込まれ、温度・圧力が上昇、含まれる有機物の石炭化が進行するため、有機物が豊富に含まれている海溝型プレート境界断層では、粘土鉱物の存在のみならず、有機物の熱熟成反応が断層の摩擦強度を低下させ、地震時の破壊伝播過程へ影響を及ぼす可能性があります(図)。さらに、陸上でも有機物を多く含む活断層が確認されており、同じく熱熟成反応が断層の摩擦強度・破壊伝播過程に影響している可能性があります。
本研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」に、5月27日(月)18時(日本時間)にオンライン公開されました。

図 プレートの沈み込み帯に伴う有機物の摩擦強度・結晶構造・分子構造の変化

本件に関する問い合わせ先

大阪大学 大学院理学研究科 准教授 廣野哲朗(ひろのてつろう)
E-mail: hirono@ess.sci.osaka-u.ac.jp
専門分野:地震断層学