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研究トピックス
2019/05/17 投稿

生命の起源-地球上にポリペプチドが出現したルートの解明にもつながる成果-位置選択的ペプチド結合合成法の発見-

大阪大学大学院理学研究科化学専攻有機生物化学講座の岡本亮講師、大学院生の原口拓也(博士前期課程)、野村幸汰(博士前期課程)、真木勇太助教、梶原康宏教授および高知大学教育研究部総合科学系複合領域科学部門の和泉雅之教授(研究当時:大阪大学大学院理学研究科化学専攻 准教授)らのグループは、硫黄原子を含むアミノ酸の一種、α-アミノチオアシッドの酸化反応が位置選択的※2にアミノ酸間のペプチド結合を生じさせることを発見しました。
この実験では、天然に存在する20種類のアミノ酸のうちの幾つかを、それぞれα-アミノチオアシッドへ変換後、酸化された鉄試薬と混ぜると、天然型のポリペプチドが作られることを発見しました(図)。ポリペプチドは、さらにコンパクトに折りたたむと生命活動を維持するために必要なタンパク質となります。今回の発見から、地球に生物が誕生する前の環境に近い条件でも、ポリペプチドが作られる可能性が示唆されたため、実際に単純な酸性水溶液中で鉄鉱石の塊とα-アミノチオアシッドを混ぜたところ、自発的にペプチドが作られることを確認しました。このことから本研究は、天然型のポリペプチドの新しい合成法を提案するだけでなく、地球上にポリペプチドが出現した新たなルートの存在を示唆する結果となりました。
本研究成果は、2019年2月21日(木)(日本時間)米化学会誌 “Biochemistry”に発表されました。また、この成果のイメージが雑誌(58巻12号誌)のカバー画像としても採用されています。

図 α-アミノチオアシッドを利用したペプチド合成. α-アミノチオアシッド(a)は、α-アミノ酸(b)のカルボキシ基の酸素原子がひとつ硫黄原子に置き換えられたものである。塩化鉄を含む酸性溶液に、フェニルアラニンのα-アミノチオアシッド(c)を溶かして静置するとフェニルアラニンポリペプチド(e)がつくられ沈殿物(g)となる。

本件に関する問い合わせ先

大阪大学 大学院理学研究科
教授 梶原 康宏(かじはら やすひろ)
TEL:06-6850-5380   FAX:06-6850-5382
E-mail:kajihara@chem.sci.osaka-u.ac.jp