1. HOME >
  2. 研究トピックス >
  3. 時間分解静電気力顕微鏡により電荷の動きをナノ秒動画で撮影―材料科学とデバイスに貢献する先端計測技術―
研究トピックス
2019/01/30 投稿

時間分解静電気力顕微鏡により電荷の動きをナノ秒動画で撮影―材料科学とデバイスに貢献する先端計測技術―

大阪大学大学院理学研究科の松本卓也教授と荒木健人大学院生(博士後期課程2年)らの研究グループは、ナノ秒かつナノスケールの時間空間分解能を有する探針同期時間分解静電気力顕微鏡を開発し、有機太陽電池表面の電荷の動きを動画で観察することに成功しました。
これまで、静電気力顕微鏡にパルス光やパルス電圧を組み合わせることにより、静電気力顕微鏡に時間分解能を与える研究が行われてきました。しかし、これらの研究では時間分解能を上げると十分な検出感度を得ることが難しくなることから、原理検証にとどまっていました。
今回、松本教授らの研究グループは、静電気力顕微鏡に用いる探針の振動運動と電荷生成の同期をとることにより、時間分解能と検出感度の両立を試みました(図1)。本手法を大阪大学産業科学研究所安蘇芳雄名誉教授、家 裕隆准教授らのグループで形成された有機二層膜太陽電池に適用して、表面電荷の動きを動画で撮影することに成功し、本手法の有為性を実証しました。太陽電池では、光によって励起されて正(+)と負(-)の電荷が生成されたあと、これらを素早く空間的に分離して再結合を妨げることにより、電荷の持つエネルギーを化学反応や電池出力として利用することができます。この実験のように電荷の動きや電気的な極性をナノスケールで観察することは、機能的な材料やデバイスを理解し、コントロールするためにも重要です。今回の成果は、有機デバイスや触媒反応など、ナノスケールの電荷のダイナミクスが重要な広範な分野への応用が期待されます。
本研究成果は、Nature Research (英国)の電子雑誌「Communications Physics」に、1月25日(金)(英国時間)に公開されました。

図1:探針同期時間分解静電気力顕微鏡の原理。
対象物(ピンク)に励起光を照射して生成された電荷(δ+)の動きと高い周波数で振動している深針のカンチレバーの機械的な運動を同期させることにより、時間分解能と検出感度の両立が実現。

本件に関する問い合わせ先

大阪大学 大学院理学研究科
教授 松本 卓也(まつもと たくや)
TEL:06-6850-5400   FAX: 06-6850-5403
E-mail: matsumoto-t@chem.sci.osaka-u.ac.jp