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研究トピックス
2016/11/09 投稿

非晶質微粒子が残存≒約千年以内に活動した断層!‐活断層の新たな活動性評価方法となる事に期待‐

国内外を問わず、大陸には数多くの活断層が発達し、大都市や重要な人工構造物(例えば原子力発電所・化学プラント・石油プラント)へ与える影響の見直しが必要とされています。特に、原子力発電所敷地内に発達する破砕帯の活動性の評価は喫緊の最重要課題です。しかし、活断層かどうかの評価には、地表付近に堆積している第四紀堆積層のズレの存在が唯一の判断基準であり、敷地の整地時に第四紀堆積層を削剥し、かつ破砕帯の側方延長が露出する露頭がない場合、破砕帯の活動性の評価はほぼ不可能です。

そこで本研究では、破砕帯に非晶質微粒子が含まれるかどうかを確認し、その場の環境条件を含めた溶解反応の速度論的解析を実施することによって、直近約1000年前以内に活動したのかどうかを判定する新しい評価法を提案しました。

はじめに、1596年慶長伏見地震で活動した有馬-高槻断層帯(図1)の断層試料を電子顕微鏡で観察・分析した結果、周辺の岩石と比較して、数10ナノメートル以下のサイズの非晶質な微粒子が、多く含まれていることを発見しました。次に、非晶質微粒子の溶解速度定数を文献値から参照し、現地の環境条件(温度・pH)にて、何年間保存されうるかを解析しました。その結果、鉱物の半径が10μmでは約1万年以上、保存されることに対し、半径100 nmの非晶質シリカは約1000年で完全に消失(地下水に溶解)することがわかりました。また、非晶質シリカと石英を比較した結果、半径100 nmの石英は1万年以上、保存されます。以上の結果より、「非晶質な微粒子が残存している断層≒約1000年以内に活動した活断層」という活断層の活動性の新たな評価メソッドが提案できます。

今後、歴史地震を引き起こした他の活断層にて検証を重ね、断層に含まれる鉱物の種類等による影響の精査を行うとともに、溶解速度定数を各断層の試料にて実験的に決定することによって、最新活動時期の推定が期待されます。

本研究成果は、英国Nature Publishing Groupの「Scientific Reports」に、日本時間11月9日(水)19時にオンライン公開されました。

photo20161109

図1:有馬-高槻断層帯の露頭

本件に関する問い合わせ先

大阪大学大学院理学研究科 宇宙地球科学専攻
准教授 廣野 哲朗(ひろの てつろう)
E-mail:hirono@ess.sci.osaka-u.ac.jp