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研究トピックス
2016/10/04 投稿

相同組換え酵素Rad51が染色体異常を抑制するメカニズムを解明 ‐乳がんなどに特異的な抗がん剤の開発に期待‐

大阪大学大学院理学研究科の中川拓郎准教授、升方久夫教授、高橋達郎助教、大仲惇司(博士課程3年)らの研究グループは、染色体研究のモデル生物である分裂酵母を用いて、DNA相同組換え酵素であるRad51とRad54がリピート配列の間での「非交叉型組換え」を促進することで、Mus81によって起こる「交叉型組換え」を介した染色体異常の発生を防ぐことを明らかにしました。

生物にとって、遺伝情報の担い手である染色体を維持することは重要です。染色体のセントロメア領域にある逆向きリピート配列(反復配列)間の組換えを介して染色体異常が起きると、染色体の両腕が同一配列で且つ鏡像関係となった同腕染色体が形成されます。

本研究により、相同組換え酵素Rad51はRad54と協調して、リピート間での局所的な組換え「非交叉型組換え」を促進するが、逆に、リピート配列間の「交叉型組換え」や同腕染色体の形成は抑制することが明らかになりました。

これまでRad51は相同組換え全般に必要だと信じられてきました。しかし、本研究から、Rad51がないときでも「交叉型組換え」が起こり、これによって染色体異常が生じる可能性が考えられました。

そこで、この仮説を検証するために、Rad51を欠失した細胞で「交叉型組換え」に働くDNA切断酵素Mus81を遺伝子破壊したところ(図1:mus81∆ rad51∆)、実際にrad51欠失細胞(図1:rad51∆)で見られていた「交叉型組換え」が減少し、染色体異常の発生頻度の低下も見られました(図1)。

これらの結果から、Rad51とRad54は選択的に「非交叉型組換え」を起こすことで「交叉型組換え」による染色体異常を防ぐと考えられます。今後Mus81に対する特異的阻害剤を発見することが、BRCA1やBRCA2に変異を持つがん患者に対する新たながん予防薬や治療薬の開発につながると期待されます。

本研究成果は、英国科学誌「Nucleic Acids Research」(Oxford University Press)」のオンライン版で、10月4日(火)午前2時(日本時間)に公開されました。

research20161004

図1. 染色体異常の発生頻度

本件に関する問い合わせ先

大阪大学大学院理学研究科 生物科学専攻
准教授 中川 拓郎(なかがわ たくろう)
E-mail:takuro4@bio.sci.osaka-u.ac.jp