東京大学物性研究所の福島優斗大学院生(研究当時)、森亮助教(研究当時)、近藤猛准教授らの研究グループは、同大学物性研究所の鈴木博之高度学術専門職員、大阪大学大学院理学研究科の越智正之准教授、東京大学物性研究所の木下雄斗特任助教、徳永将史教授らのグループ、同大学物性研究所の齋藤開助教、中島多朗准教授らのグループ、東京大学大学院工学系研究科の森本高裕准教授(研究当時)らとの共同研究により、理論的に予測されていた磁石の性質を持つディラック電子(磁性ディラック電子)を世界で初めて直接観測することに成功しました。この成果は、スピンの向きが100%揃った電流(完全スピン偏極電流)の実現を裏付ける電子状態を実証したものです。
物質中の電子を自在に制御する技術は、半導体や磁気記録の発展を支え、現代社会の基盤となっています。電子には、「電荷」と「スピン」という二つの重要な性質があります。電荷が流れることで電流となり情報を運び、スピンの向きが揃って固定されることで磁石となり情報を記憶します。しかし、普通の金属では電子の動きとスピンの向きが互いに無関係であるため、スピンの向きが100%揃った電流(完全スピン偏極電流)を流すことはできません。
本研究では、このような電流の実現が理論的に予想されていた「磁性トポロジカル絶縁体」に着目しました。電子一つ一つの「運動する方向」と「スピンの向き」の関係を観測し、電流の向きによってスピンの向きが一意に決まる完全スピン偏極電流の実現を裏付ける電子状態を初めて明らかにしました。このような電流では、通常の電流が運ぶ電荷の情報に加えて、スピンの情報も同時に伝えることができるため、従来にはない情報伝達技術や新しいスピントロニクス技術への応用が期待されます。
本成果は、Nature Communications誌に英国夏時間9月15日付で掲載されました。

本研究では、磁石の性質を持つ特殊な電子「磁性ディラック電子」を直接観測し、100%スピンが揃った「完全スピン偏極電流」を実現するための電子状態を実証しました。
本件に関する問い合わせ先
大阪大学 大学院理学研究科 物理学専攻
准教授 越智 正之 (おち まさゆき)
TEL:06-6850-6749
E-mail:ochi@phys.sci.osaka-u.ac.jp