大阪大学大学院理学研究科の宮本愛子さん(博士後期課程)、川室太希助教、小高裕和准教授、松本浩典教授、国立天文台の泉拓磨准教授の研究グループは、超巨大ブラックホール周辺の物質から放たれる鉄の蛍光X線の明るさが時間変化していることを世界で初めて捉え、従来のX線望遠鏡の解像度(約30光年)では見ることができなかった、20光年よりも小さな空間スケールの構造の存在を明らかにしました。
本研究では、NASAのX線天文衛星であるチャンドラ衛星による20年分の観測データを解析し、鉄の蛍光X線の明るさが半年から数年のスケールで激しく変化していることを発見しました。この「光のまたたき」を利用することで、X線望遠鏡の視力の限界(解像度)よりも小さな空間スケールの構造を特定しました。さらにアルマ望遠鏡による観測データと組み合わせることで、この構造が強烈なX線に照らされたことで分子ガスが破壊された領域でエコーが起こっている可能性も示しました。
これまで、銀河の中心に存在する超巨大ブラックホールを取り囲むガスやちりは、可視光や電波などの波長で観測されてきましたが、それらの波長で見えるものは一部の物質に限られていました。一方、X線の反射や吸収を使うと、あらゆる状態の物質を観測することが可能です。しかし、X線観測では、望遠鏡の解像度による制約から、その具体的な広がりや詳細な内部構造については解明されていませんでした。
今回、研究グループは、20年間にわたるX線観測のアーカイブデータを解析することにより、超巨大ブラックホール周辺のガスが20光年よりも小さな塊として存在していることを解明しました。さらに、電波の観測による分子ガスの分布と比較することにより、ブラックホールが放つX線に照らされることでガスの状態が変化していることを解明しました。これにより、銀河の進化の鍵を握るブラックホールと周囲の環境が互いに影響を及ぼし合う仕組みの理解が大きく進むと期待されます。
本研究成果は、「Publications of the Astronomical Society of Japan」に、3月2日(月)9時01分(日本時間)に公開されました。

チャンドラ衛星で観測された鉄の蛍光X線の時間変化
(黄色に光っているところが鉄の蛍光X線が強い場所)
本件に関する問い合わせ先
大阪大学 大学院理学研究科 宇宙地球科学専攻
助教 川室 太希(かわむろ たいき)
TEL: 06-6850-5476
E-mail: kawamuro@ess.sci.osaka-u.ac.jp
宇宙地球科学専攻 博士後期課程(JST 次世代育成プロジェクト fellow)
宮本 愛子(みやもと あいこ)
E-mail: miyamoto@ess.sci.osaka-u.ac.jp