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    -イオンを積極的に活用したニューロモルフィック分子ネットワークの実証-
研究トピックス
2025/12/19 投稿

マテリアルリザバー性能が向上する電子-イオン混合伝導
-イオンを積極的に活用したニューロモルフィック分子ネットワークの実証-

立教大学理学部の永野修作教授、石﨑裕也助教、山形大学理学部の松井淳教授、大阪大学大学院理学研究科の松本卓也教授、三坂朝基助教、九州工業大学大学院生命体工学研究科の田中啓文教授、早稲田大学理工学術院の長谷川剛教授らと東ソー株式会社、山梨大学、香川大学の研究グループは、導電性高分子「自己ドープ型ポリチオフェン(S-PEDOT、東ソー株式会社よりサンプル提供)」に着目し、その電気伝導状態を多価アミン(図1b)による化学的な脱ドープによって精密に制御することで、ホールとプロトン(水素イオンH+)が同時に伝導キャリアとして働く“本質的なホール–プロトン混合伝導状態”を創出することに成功しました。

本研究で見いだされた本質的な混合伝導状態を示すニューロモルフィック分子ネットワークは、近年、神経模倣型のデバイスとして注目されるマテリアルリザバー素子に必要な、非線形応答・短期記憶・高次元性といった特性を兼ね備えており、このような混合伝導状態を活用することで、マテリアルリザバーの素子性能を評価するベンチマークタスクの一つである波形生成タスクの精度が向上することを初めて実証しました。ホールとプロトンが協奏的に働く本伝導メカニズムは、生体に近い省エネルギー動作を可能にする新たなAIデバイス設計指針として期待されます。
なお、本研究成果はWiley社刊行の国際学術誌Advanced Scienceに掲載されました。

(a)自己ドープ型ポリチオフェン(S-PEDOT)と(b)脱ドープ分子である多価アミンの化学構造、(c)本系におけるホール-プロトン混合伝導状態を示すイメージ図。(d)混合伝導状態を示す条件にてマテリアルリザバー素子の性能(波形生成タスクの精度)が向上することを示す図。

 
 

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〈共同リリース機関HP〉

大阪大学 大学院理学研究科
教授 松本 卓也(まつもと たくや)
TEL: 06-6850-5400
E-mail: matsumoto-t@chem.sci.osaka-u.ac.jp