白金族元素のパラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)はハイテク製品や環境対策に欠かせない元素ですが、資源量が少なく産出国も偏在しているためリサイクルがますます重要になっています。ところが、これらの金属をきれいに分けて回収するためには複数の技術を組み合わせた複雑な処理が必要でした。
そこで研究チームでは、溶媒抽出法のみで完結するシンプルな分離方法を新たに開発しました。放射性物質の分離のため開発していた抽出剤を応用し、白金族元素を「イオンのペア」にして取り出す「イオン対(つい)抽出」という仕組みを使うことで、白金族元素を効率よく1種類ずつ分離することができます。
特に、これまで選択的な抽出・分離が難しかったルテニウムについて、従来の10倍もの効率を達成したことは本研究の大きな成果です。この技術は、都市鉱山と呼ばれる使用済み製品からの資源回収にも役立ち、持続可能な社会づくりに貢献することが期待されます。
本研究は、日本原子力研究開発機構原子力科学研究所原子力基礎工学研究センター 原子力化学研究グループの佐々木祐二博士、熊谷友多グループリーダー、横浜国立大学大学院環境情報研究院の松宮正彦教授、大阪大学大学院理学研究科の金子政志講師の共同研究によるものです。
本成果は、湿式精錬に関する国際科学誌「Journal of Molecular Liquids」のオンライン公開版(2025年12月6日)に掲載されました。

開発したPd・Ru・Rhの「イオン対抽出」による分離法
本件に関する問い合わせ先
大阪大学 大学院理学研究科
講師 金子 政志(かねこ まさし)
TEL: 06-6850-5418
E-mail: knkm@chem.sci.osaka-u.ac.jp