大阪大学大学院生命機能研究科(理学研究科兼任)の木村真一 教授(自然科学研究機構分子科学研究所 クロスアポイントメント(当時))、広島大学大学院先進理工系科学研究科 の志村恭通 准教授、高畠敏郎 名誉教授らの研究グループは、重い電子系と呼ばれる物質群の一つであるセリウム・ロジウム・スズ合金(CeRhSn)の中で強く相互作用した電子が強い量子もつれ状態にあり、その寿命がプランキアン時間に従うことを初めて観測しました。
セリウム元素などのレアアース(希土類元素)を含む化合物では、希土類元素が有する局在的な開殻4f電子により、ネオジム磁石のような強力な永久磁石や、高輝度な蛍光剤などの様々な機能性が現れます。重い電子もその様々な機能性の一つで、局在4f電子と伝導電子との強い相互作用(近藤効果)により出現し、高温超伝導などの特殊な超伝導状態を引き出すため、現在の物性物理学の中心テーマである強相関物性の起源となることが知られています。他方で、電子や光の量子もつれを利用した量子コンピュータが近年開発され、既存の計算機の性能を超えた性能が期待されています。
今回、研究グループは、CeRhSnの重い電子の動的性質を赤外・テラヘルツ分光によって調べました。その結果、重い電子の寿命が量子力学的なゆらぎの時間である「プランキアン時間」で制限されていることを明らかにしました。この結果は、強く相互作用した重い電子が量子もつれ状態にあること(図)を表しています。これにより、新奇超伝導などの物性物理学に残された量子臨界現象への量子もつれの役割の解明が進むとともに、重い電子という新たな方法による量子コンピュータへつながることが期待されます。
本研究成果は、ネイチャー系国際科学誌「npj Quantum Materials」に、8月5日(火)15時(日本時間)に公開されました。
CeRhSn上のもつれた重い電子の概念図
本件に関する問い合わせ先
大阪大学大学院生命機能研究科
教授 木村 真一(きむら しんいち)
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