理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター発生エピジェネティクス研究チームのラウィン・プーンパーム研究員、平谷伊智朗チームリーダー、近畿大学農学部生物機能科学科動物分子遺伝学研究室の佐渡敬教授、大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻染色体構造機能学研究室の小布施力史教授らの共同研究グループは、哺乳類の雌の「不活性X染色体」の特徴的なDNA複製制御の解析から、その3次元構造に関する新しい特徴を見いだしました。
本研究成果は、1960年に見いだされた不活性X染色体のS期後期複製の意義に初めて言及し、染色体構造と遺伝子発現制御の関係を明らかにするもので、高度に凝縮したヘテロクロマチンと呼ばれる染色体構造が遺伝子発現を安定的に抑制する仕組みの理解につながると期待できます。
雌の細胞が持つ2本のX染色体のうち1本は胚発生の初期に不活性化され、不活性X染色体となって遺伝子発現が抑制されます。不活性X染色体の複製様式は他の染色体とは異なり、細胞周期のS期後期に複製されます。
今回、共同研究グループは、マウスES細胞の分化に伴う不活性X染色体の複製タイミングの変化と3次元構造の変化、不活性X染色体結合タンパク質SmcHD1の役割を調べました。その結果、(1)不活性X染色体全域がS期後期に複製されるのは高度に凝縮した染色体構造をよく反映していること、(2)不活性X染色体は一見均一に凝縮しているように見えるが、染色体テリトリー内部に層構造が存在していること、(3)SmcHD1が不活性X染色体の表層領域の不活性化状態、適切な複製タイミング、および3次元構造の維持に必要であることなどを明らかにしました。
本研究は、科学雑誌『Nature Structural and Molecular Biology』オンライン版(8月10日付:日本時間8月11日)に掲載されました。
〈共同リリース機関HP〉
https://www.riken.jp/press/2023/20230811_1/index.html
https://www.kindai.ac.jp/news-pr/
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20230811-2/index.html
本件に関する問い合わせ先
大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻
教授 小布施 力史
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