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研究トピックス
2023/05/17 投稿

カエル胚がお尻の穴を開く仕組み-初期胚の体液排出の時間制御機構を解明-

 理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター体軸動態研究チーム(研究当時)の加藤壮一郎研修生(研究当時、現大阪大学大学院理学研究科招へい研究員)と猪股秀彦チームリーダー(研究当時)の研究チームは、アフリカツメガエル胚がアクトミオシンの収縮を利用して原口の開閉を制御し、原腸内の体液を適切なタイミングで排出することを発見しました。
本研究成果は、動物の初期発生期において、筋肉の未成熟な胚が体の形成に重要な体液動態を制御する新たな仕組みを提示するものです。
 アフリカツメガエル胚は、将来消化管となる原腸の形成後(原腸胚期)に、原腸と胚外をつなぐスリット型のお尻の穴「原口」を閉じることで、原腸内に体液を蓄えたまま発生し、後期神経胚期に原口を開くことで体液を胚外に排出します。原腸内の体液は体の左右軸決定に重要な役割を担っており、体液の維持は正常な発生に不可欠だと考えられています。この原口の開閉は半世紀以上前に報告されていますが、筋肉の未熟な胚が、あたかも尿道や肛門を括約筋で制御するように原口の開閉を時間制御する仕組みは不明でした。
 今回、研究チームは原腸内の液圧と原口の耐圧上限値(閉鎖状態を保てる限界の圧力)を計測し、液圧の上昇ではなく、耐圧上限値の低下が開口を引き起こすことを突き止めました。さらに、原口の耐圧上限値はスリット両側の組織からかかる押し合う力によって制御されていることや、この力は原口スリット背腹両端の細胞に存在するアクトミオシンの収縮によって生み出され、排出時には腹側端の収縮が解消することで開口することを明らかにしました。
 本研究は、オンライン科学雑誌『iScience』(4月24日付)に掲載されました。

図. アフリカツメガエル胚の原口の開閉を制御するアクトミオシンを介した収縮機構

〈共同リリース機関HP〉


本件に関する問い合わせ先

大阪大学理学研究科庶務係
E-mail: ri-syomu@office.osaka-u.ac.jp