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研究トピックス
2023/02/14 投稿

植物は細胞を“寿司詰め”にして形を整える!細胞を対称に配置するタンパク質を特定~植物の形や成長を促す技術に期待~

 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域の宮島俊介(みやしま しゅんすけ)助教、大阪大学大学院理学研究科の藤本 仰一(ふじもと こういち)准教授と藤原基洋(ふじわら もとひろ)博士(研究当時:博士後期課程3年)、名古屋大学、英 セインズベリー研究所の国際共同研究グループは、植物の維管束に共通する水分を運ぶ導管(どうかん)と栄養分を運ぶ篩管(しかん)の細胞配置の対称性は、篩管の周りでの細胞増殖が離れて位置する導管の細胞を一方向に押し込むことで高まることを、世界で初めて発見しました。さらに、対称性構築の鍵となる細胞増殖の位置を決めるタンパク質を突き止めました。
 生き物の形は、細胞が規則正しく配置することで作り上げられます。動物では、細胞が移動することで適切な細胞配置が作られますが、細胞壁で覆われた植物の細胞は、細胞が移動することができません。身動きを封じられた植物細胞が、どのようにして、細胞を正確に並べるのか、その仕組みはこれまで明らかにされていませんでした。
 今回、宮島助教らの共同研究グループは、モデル植物シロイヌナズナの根の維管束につくられる導管細胞と篩管細胞の対称的な配置に着目し、その形成過程で各細胞の増殖(分裂)や配置の変化などを詳細に調べました。その結果、篩管の周りの細胞が増殖することで維管束を成長させると共に、導管と篩管の配置の対称性が高まっていくことを発見しました。また、計算機ミュレーションやレーザーを用いた細胞除去実験から、篩管の周りでの細胞増殖が、維管束内の細胞を“寿司詰め”にすることで、一定方向の圧縮力を発生させ、離れた場所に位置する導管と篩管の配置の対称性を高めることを実証しました。さらに、HANというタンパク質(転写調節因子)が植物ホルモンであるサイトカイニンの作用を調節することで、対称性構築の鍵となる細胞増殖の位置が決まることを発見しました(図)。
 本研究は、植物の遺伝子プログラムに従い働くタンパク質や植物ホルモンが、細胞増殖を調節し、さらにその効果が圧縮力という物理的な力に置き換わることで、器官の配置の対称性を制御することを解明した世界初の成果です。本研究の成果は、植物の成長や形を自在に操る技術の開発に繋がることが期待されます。
 本研究成果は、米国科学誌「Current Biology」に、2023年2月13日 午前11:00(アメリカ東部時間)(日本時間: 2023年2月14日 午前1:00)(オンライン)に掲載されました。
 DOI:https://doi.org/10.1016/j.cub.2023.01.036

図. 研究の概要

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〈共同リリース機関HP〉

本件に関する問い合わせ先

大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻
准教授 藤本 仰一(ふじもと こういち)
E-mail: fujimoto@bio.sci.osaka-u.ac.jp