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研究トピックス
2023/01/06 投稿

チタン・バナジウム中性子過剰同位体で新魔法数の消失を観測〜精密質量測定による原子核構造のより深い理解に期待〜

 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)・素粒子原子核研究所・和光原子核科学センター(和田道治センター長)のマルコ=ローゼンブシュ特任助教、 国立研究開発法人理化学研究所(理研、埼玉県和光市)仁科加速器科学研究センター低速RIビーム生成装置開発チーム(石山博恒チームリーダー)の飯村俊ジュニアリサーチアソシエイト(大阪大学大学院理学研究科物理学専攻博士後期課程、研究当時)を中心とする国際共同研究グループは、理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」の超伝導RIビーム生成分離装置(BigRIPS)および低速RIビーム生成装置(SLOWRI)と多重反射型飛行時間測定式質量分光器(MRTOF)を用いて、中性子過剰なバナジウム、チタン同位体の高精度質量測定に成功しました。これにより、中性子数34という新魔法数がチタン、バナジウム同位体において消失していることがわかりました。これは理化学研究所RIBFの基幹装置BigRIPSに低速RIビーム生成装置SLOWRIを組み合わせた新しい実験装置の最初の成果です。
 近年、中性子過剰なカルシウム同位体において見いだされていた中性子数N=34の新魔法数は、幾つかの先行研究においてスカンジウム同位体では消滅しているものの、チタン、バナジウム同位体では魔法数性があることを示唆していました。本研究によるより高精度の質量測定によってそれを覆す結果となりました(図)。
 本研究は、RIBFのBigRIPSで生成された高速RIビームが他の実験で使われた後のビームを用いた、共生実験として行われました。高速RIビームはSLOWRI装置によって減速しイオントラップに捕集されMRTOF質量分光器で質量測定されました。MRTOFは、10数ミリ秒という短い飛行時間で複数の原子核を同時に高精度で質量を決定することができる、短寿命な原子核の精密質量測定に最適な装置です。しかも他の実験で使用したビームを再利用して測定できるので、今後広範囲の原子核の網羅的質量測定の能率良い実施が期待されています。
 本研究の成果は、物理学の国際的な専門誌である「Physical Review Letters」に1月5日(米国東部時間)に掲載されました。

図. 中性子数N=34同調体の2中性子殻間隙エネルギーΔ2nの推移
魔法数性を示す指標である2中性子殻間隙エネルギー(Δ2n)のN=34同調体での推移から、過去の文献値ではチタン、バナジウムにおいて魔法数性を持つことが示唆されていましたが、本研究による精密質量測定によって、スカンジウムやクロムと同様に魔法数性は無いことが証明できました。

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〈共同リリース機関HP〉

本件に関する問い合わせ先

大阪大学大学院理学研究科物理学専攻
准教授 小田原 厚子(おだはら あつこ)
TEL: 06-6850-5744  FAX: 06-6850-5764
E-mail: odahara@phys.sci.osaka-u.ac.jp