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研究トピックス
2022/11/15 投稿

新時代の天体観測 超新星残骸からのX線偏光検出に世界で初めて成功-IXPEで複雑な磁場構造を可視化-

 大阪大学大学院理学研究科の大学院生の朝倉一統さん(博士後期課程)、故・林田清准教授らの研究グループは、X線偏光撮像衛星IXPE (Imaging X-ray Polarimetry Explorer) による超新星残骸カシオペア座A(Cas A)の観測により、世界で初めて超新星残骸からのX線偏光検出に成功しました。IXPEは2021年12月9日に打ち上げられた世界初のX線偏光撮像衛星であり、Cas A はIXPEが最初に科学観測を行った天体です。
 超新星残骸の衝撃波近傍でこれまでに観測されてきたX線放射は磁場との相互作用によるものであり、磁場と垂直な方向に高い偏光度を有することが予測されていました。しかし、X線偏光の測定は技術的に困難であり、長らく観測的進展がない状態が続いてきました。
 今回、IXPEが初めてCas AのX線帯域の偏光測定を実現させたことにより、磁場は全体的に見れば中心から放射状に伸びていることが明らかになりました(図)。また、偏光度が低いことから、粒子の加速現場では磁場が入り乱れていることを示しています。今後はCas Aに加えて他の超新星残骸も観測予定であり、これらの観測結果も合わせて未だよく分かっていない衝撃波近辺での粒子加速のメカニズムの解明につながることが期待されます。本研究成果は、米国科学誌「Astrophysical Journal」に2022年10月10日(米国時間)に公開されました。

図. 複数の波長帯で撮影したCas Aの画像にIXPEの観測から推定された磁場方向を重ね合わせた図。
緑の部分は特に偏光検出の有意度が高い箇所を指す。
Credits: X-ray: Chandra: NASA/CXC/SAO;
IXPE: NASA/MSFC/J. Vink et al.

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大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻
教授    松本 浩典(まつもと ひろのり) TEL : 06-6850-5477
助教    野田 博文(のだ ひろふみ)   TEL : 06-6850-5478
大学院生  朝倉 一統(あさくら かずのり) TEL : 06-6850-5475