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研究トピックス
2022/10/27 投稿

クォーク物質を重力波で探る-中性子星合体後の重力波から超高密度物質の痕跡を読み取る-

 理化学研究所(理研)数理創造プログラムのホワン・ヨングジア研修生、開拓研究本部長瀧天体ビッグバン研究室の長瀧重博主任研究員(理研数理創造プログラム副プログラムディレクター)、大阪大学インターナショナルカレッジ(理学研究科兼任)のバイオッティ・ルカ准教授、東北大学大学院理学研究科の古城徹准教授らの国際共同研究グループは、連星中性子星の合体に対して一般相対性理論に基づいた数値シミュレーションを行い、合体後に放出される重力波の波形から1cm3当たり1兆kgを超える超高密度物質の性質が詳細に読み取れることを示しました。
 本研究成果は、重力波天文学において、中性子星の内部構造や超高密度物質の性質の解明に貢献すると期待できます。
 中性子星の中心部のような超高圧下では、中性子や陽子からなるハドロン物質が徐々に融解することで、素粒子からなる新物質(クォーク物質)が連続的に現れるとする「ハドロン−クォーク連続性」という理論予想があります。
 今回、国際共同研究グループはこの理論予想に基づき、連星中性子星合体の一般相対論に基づいた数値シミュレーションを世界で初めて実行し、合体後高速回転する中性子星から放出される重力波を詳細に解析しました。合体後の超高圧状態が(1)ハドロン物質のままとどまる、(2)ハドロン物質が一次相転移[7]を経て、クォーク物質が突然現れる、(3)ハドロン物質が徐々にクォーク物質に変化する、という3パターンのシミュレーション結果には、高速回転運動を特徴付ける重力波の周波数に明らかな違いが出ることを突き止めました。
 本研究は、科学雑誌『Physical Review Letters』オンライン版(10月26日付:日本時間10月27日)に掲載されました。


図. ハドロン−クォーク連続性の概念図
低密度(低圧力)下では、クォーク(赤・青・緑の丸)は陽子や中性子(点線で囲まれたハドロン)中に閉じ込められているが、高密度(高圧力)下では、クォークがハドロンから徐々にしみ出して、最終的にはクォーク物質に変わる。

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本件に関する問い合わせ先

大阪大学インターナショナルカレッジ/理学研究科(兼任)
准教授 BAIOTTI Luca(バイオッティ ルカ)
TEL:06-6850-5577  FAX:06-6850-5846
E-mail: baiotti@astro-osaka.jp