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研究トピックス
2022/12/14 投稿

【2022/12/14追記】提唱から60年。温和な条件下で反芳香族イソフロリンの合成に成功

この研究に関連するイラストが雑誌のCoverPictureに掲載されました。
https://chemistry-europe.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ejoc.202201406

(作成:杉村若葉)
初めて合成された反芳香族イソフロリンの構造(周辺置換基等は省略)を書道で描いた。赤い線は、反芳香族環状共役を示している。周辺にはその特徴「金属導入や中心修飾なしの反芳香族イソフロリン」を日本書道独自の表現である「散らし書き」で示した。


(以下、2022/10/4 投稿の研究トピックス) 

 大阪大学大学院理学研究科の杉村晴菜さん(博士前期課程2年)、中島可奈さん(博士前期課程修了)、小川琢治教授(研究当時)、山下健一講師らの研究グループは、世界で初めて、中心金属を持たず中心元素の置換もされていない反芳香族イソフロリンの合成を達成しました。イソフロリンは、ノーベル化学賞を受賞したWoodwardによって、ポルフィリン合成の中間生成物として提唱された化合物です。今回の反芳香族イソフロリン単離の成功は、1960年に存在が示唆されて以来60年の快挙であると言えます。
 反芳香族イソフロリン単離の鍵は、合成前駆体として還元反応を受けやすいポルフィリンを採用したことにあります。具体的には電子求引性のシアノ基を4つ導入したポルフィリンを還元することで、反芳香族イソフロリンの合成、単離に成功しました。このポルフィリンーイソフロリンの変換は可逆的であり、さらに大気中で温和な条件下で行うことができます。可逆なポルフィリンーイソフロリンの変換、すなわち芳香族―反芳香族の変換は、センシング材料などへの応用が期待されています。
 本研究成果は、国際学術誌「European Journal of Organic Chemistry」に、8月31日(水)に重要論文(Very Important Paper)として公開されました。また、この研究に関連するイラストが表紙に掲載される予定です。

図. 今回合成した反芳香族イソフロリンとその前駆体ポルフィリンの化学構造とその溶液の写真

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本件に関する問い合わせ先

大阪大学大学院理学研究科化学専攻
講師 山下 健一(やました けんいち)
TEL: 06-6850-5394 FAX: 06-6850-5395
E-mail: yamashita-k@chem.sci.osaka-u.ac.jp