1. HOME >
  2. 研究トピックス >
  3. 二次元金属に「フェロバレー強磁性」を誘起することに成功―第三のエレクトロニクスである「バレートロニクス」への応用展開が期待―
研究トピックス
2022/09/15 投稿

二次元金属に「フェロバレー強磁性」を誘起することに成功―第三のエレクトロニクスである「バレートロニクス」への応用展開が期待―

 東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻の松岡秀樹大学院生(研究当時、現在:理化学研究所創発物性科学研究センター創発デバイス研究チーム 基礎科学特別研究員)、同研究科附属量子相エレクトロニクス研究センター・物理工学専攻の岩佐義宏教授(理化学研究所創発物性科学研究センター創発デバイス研究チーム チームリーダー兼任)、中野匡規特任准教授(理化学研究所創発物性科学研究センター創発機能界面研究ユニット ユニットリーダー兼任)の研究グループは、北海道大学大学院工学院・大学院工学研究院の羽部哲朗研究員(研究当時、現在:京都先端科学大学)および大阪大学大学院理学研究科の越野幹人教授と共同で、原子層数層からなる二次元金属NbSe2と二次元強磁性体V5Se8を重ねた磁性ファンデルワールス(vdW)ヘテロ構造を作製することに成功しました(図a)。そして、実験と理論の比較から、このヘテロ構造の界面ではNbSe2中の伝導電子のスピンとバレーの両方が自発的に分極した「フェロバレー強磁性」という新しい状態が形成されていることを明らかにしました(図b)。伝導電子のスピンが自発的に分極した強磁性状態は、多くの強磁性金属で実現されており、スピントロニクスへの応用が盛んに研究されています。今回、スピンに加えてバレーも自発的に分極したフェロバレー強磁性が実現されたことにより、従来のスピントロニクスだけでなく、電子のバレー自由度を情報担体として利用するバレートロニクスへの応用展開も期待されます。また、NbSe2はもともと超伝導体であるため、極低温では超伝導とフェロバレー強磁性が結合した新奇量子相の発現が期待されます。
 本研究成果は、2022年9月15日(英国夏時間)に英国科学誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。

図.(a) NbSe2 / V5Se8磁性vdWヘテロ構造の模式図。二次元金属であるNbSe2超薄膜と二次元強磁性体であるV5Se8超薄膜を積層させると、界面に新しい状態が出現する。(b) 特にNbSe2に注目すると、V5Se8からの磁気近接効果によってスピン(上下矢印)とバレー(Kと-K)が自発的に分極した「フェロバレー強磁性」が形成される。

Related links


〈共同リリース機関HP〉

本件に関する問い合わせ先

大阪大学大学院理学研究科物理学専攻
教授 越野 幹人(こしの みきと)
TEL: 06-6850-5742 
E-mail: koshino@phys.sci.osaka-u.ac.jp