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研究トピックス
2022/09/07 投稿

司令塔は体内時計!季節情報をグルタミン酸が伝達-動物の季節適応の仕組み解明へ-

 大阪大学大学院理学研究科の長谷部政治助教と志賀向子教授は、昆虫脳を用いて、神経伝達物質であるグルタミン酸の脳内レベルが、概日時計遺伝子に基づいて日長変化を示し、季節応答に寄与することを世界で初めて明らかにしました。
 多くの動物は季節の移り変わりを1日の日の長さ(日長)の変化から感じ取り、体内の生理状態や行動を季節に応じて調節しています。これまでの長年の研究から、約24時間周期のリズムを作る体内時計(概日時計)が、日長情報の読み取りに重要であることが示唆されてきました。一方、概日時計に基づいて日長情報を伝える脳内の神経伝達機構についてはほとんどわかっていませんでした。
 今回、長谷部助教と志賀教授は、生殖機能に明瞭な光周性を示すカメムシを用いて、脳内の神経伝達物質であるグルタミン酸のレベルが、概日時計遺伝子依存的に日長条件に応じて顕著に変化することを明らかにしました(図)。また、グルタミン酸は抑制性受容体を介して産卵促進に寄与するニューロン(神経細胞)の活動性を制御することで、日長に応じた産卵の制御に関与していることもわかりました(図)。グルタミン酸は昆虫だけでなく、幅広い動物種の脳内情報伝達に用いられているため、グルタミン酸シグナルに着目した研究が今後発展していくことで、動物種全般における概日時計に基づいた季節情報の伝達機構の理解が進むことが期待されます。
 本研究成果は、米国科学誌「PLOS Biology」に、9月7日(水)午前3時(日本時間)に公開されました。

図. 脳内のグルタミン酸レベルは概日時計遺伝子に基づいて日長変化を示し、産卵促進ニューロンの活動性を制御している

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本件に関する問い合わせ先

大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻
助教 長谷部 政治(はせべ まさはる)
TEL: 06-6850-5422 FAX: 06-6850-6769
E-mail: h.masaharu@bio.sci.osaka-u.ac.jp