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    光に反応する転写因子の1分子構造動態を世界初計測
    -遺伝子発現を制御する分子の機能メカニズムの解明へ-
研究トピックス
2022/08/09 投稿

30億から特定の遺伝子を探しだす不思議
光に反応する転写因子の1分子構造動態を世界初計測
-遺伝子発現を制御する分子の機能メカニズムの解明へ-

 大阪大学大学院基礎工学研究科大学院生の辻明宏さん(博士後期課程)、山下隼人助教、阿部真之教授、大阪大学大学院理学研究科の久冨修准教授は、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いて、遺伝子発現を制御する転写因子と呼ばれるタンパク質の詳細な1分子構造動態を計測することに世界で初めて成功しました。
 転写因子は遺伝子発現の制御を通じて細胞の様々な機能を担う、すべての生物にとって必要不可欠なタンパク質ですが、膨大な遺伝情報を含むDNAの中から特定の遺伝子をどのように探し出して制するかは生命の大きな謎の一つでした。様々な研究から多くの転写因子が二量体を形成していることが分かってきており、この二量体形成が謎を解く重要な鍵として注目されていましたが、その形成の仕組みはこれまで良く分かっていませんでした。今回、上記研究グループは、藻類の光依存的な分枝に関わる転写因子を改変したPhotozipper(略してPZ)というタンパク質分子を、高速AFMと呼ばれる新しい顕微鏡を利用して観察しました。その結果、この分子が光依存的に構造を変える様子やそれらが結合して二量体を形成する様子が世界で初めて明らかになりました(図)。これは転写因子が遺伝子発現を制御する仕組みを解明する上で非常に重要な成果です。転写因子はがん細胞の増殖や免疫応答など多くの疾患にも関わっていることから、今後は医学的な応用研究にも繋がると期待されます。
 本研究成果は、国際学術誌「Scientific Reports」に、2022年8月8日(月)18時(日本時間)に公開されました。

図. 高速AFMで捉えられた転写因子Photozipper(PZ)分子の構造。PZ分子は光を受容する球状のLOVドメインとDNAに結合する紐状のbZIPドメインを持つ。暗所でPZの単量体分子はbZIPがLOVに付いた構造をしているが(上段)、光を照射するとLOVからbZIPが離れた構造へ変化している(下段右)。更に、これら分子が2つ集まって二量体を形成する様子も明らかになった(下段左)。

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本件に関する問い合わせ先

大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻
准教授 久冨 修(ひさとみ おさむ)
TEL: 06-6850-5500 FAX: 06-6850-5480
E-mail: hisatomi@ess.sci.osaka-u.ac.jp