大阪大学大学院理学研究科のPingping Qian助教、柿本辰男教授らの研究グループは、篩部が形成される細胞で発現する複数のDofタイプ転写因子(phloem-Dof)は篩部の細胞分化を誘導するのみならず、篩部構成細胞の形成を阻害する分泌性ペプチド分子CLE25, 26, 45の合成も誘導することを見出しました。CLE25,26,45はBAM受容体-CIK共受容体複合体によって受容されてphloem-Dofを減少させることにより、本来の篩部形成位置の周りの細胞が篩部にならないようにしていることも見出しました。篩部組織は栄養分を輸送する重要な組織です。篩部形成を制御する因子の報告が相次いでいますが、これらの因子の働きでどのように正しく篩部が作られるのかはわかっていませんでした。
今回の発見で、phloem-Dofは篩部細胞形成制御の最上位で働くこと、転写調節と細胞間のコミュニケーション分子の協調作用が正しい配置で篩部を作り出すことを示したもので、植物の発生の仕組みの一端が明らかになったものと言えます。
本研究成果は、英国科学誌「Nature Plants」に、7月12日(火)午前0時(日本時間)に公開されました。
本件に関する問い合わせ先
大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻
教授 柿本 辰男(かきもと たつお)
TEL:06-6850-5421
E-mail: kakimoto@bio.sci.osaka-u.ac.jp