理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター機能開発研究グループのキム・ジュンシク研究員(研究当時、現バイオ生産情報研究チーム研究員)、篠崎一雄グループディレクター、大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻の坂本勇貴助教、東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻の松永幸大教授、東京農業大学農生命科学研究所の篠崎和子教授らの共同研究グループは、環境変動に応じた植物の根の伸長調節に関わる新たな遺伝子制御因子を発見しました。
本研究成果は、植物工場や都市型農業に向けた地下部生産性の向上に貢献すると期待できます。
今回共同研究グループは、「小胞体ストレス応答(UPR)」と呼ばれる細胞内恒常性の維持機構が欠損したシロイヌナズナの変異株(bz1728)が示す、著しい根の伸長阻害を回復した突然変異体nobiro6株の分子遺伝学的解析を行いました。その結果、伸長回復は基本転写因子複合体の構成因子「TAF12b」の機能欠損によることが明らかになりました。さらに、網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、bz1728株では数百個の遺伝子の発現が上昇・低下の両方向に大きく変動するのに対し、nobiro6株では上昇方向の変動だけが通常程度に回復することが分かりました。回復した遺伝子群の多くがストレス耐性獲得に機能することから、TAF12bは植物が感知した外部ストレスのシグナルを根の細胞の成長応答に結び付ける重要な遺伝子制御因子であると考えられます。
本研究は、科学雑誌『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America』(2月8日付)への掲載に先立ち、オンライン公開されました。
本件に関する問い合わせ先
大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻
助教 坂本 勇貴(さかもと ゆうき)
TEL:06-6850-6765 FAX:06-6850-6765
E-mail: yuki_sakamoto@bio.sci.osaka-u.ac.jp