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2025/12/05 投稿

「10周年記念インタビュー<第2部>
豊中地区研究交流会の現在、そして未来」を公開しました

10周年記念インタビュー<第2部>※1
豊中地区研究交流会の現在、そして未来

※1  2025年9月18日、基礎工学国際棟ホワイエにて実施。

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[北村教授(以降、敬称略)]ここからは、豊中地区研究交流会の幹事部局、3部局ございますが、そこから基礎工学研究科の浜屋先生と理学研究科の水谷先生にも入っていただいて、さらに議論を深めていきたいと思います。

まず、浜屋先生と水谷先生にお聞きします。最初このお話、研究交流会があるというお話をお聞きになったとき、どのような感想を持たれたのか、そして実際委員※2をされてどのように感じられたのかというあたりをお話しいただけますでしょうか?

※2  主催部局を代表する教員によって構成される豊中地区研究交流会委員会のメンバーのこと。第1回豊中地区研究交流会が開催された翌年(2017年)、基礎工学研究科の酒井朗教授(第1回開催当時、基礎工学研究科副研究科長として本研究交流会の運営に参加)の要請を受けて発足。これにより、豊中地区の研究交流会として地位を確立。さらに、理学研究科、法学研究科、基礎工学研究科の3部局を委員会の幹事部局とする体制が整備された。

 

基礎工学研究科•浜屋宏平教授

[浜屋教授(以降、敬称略)]10年ほど前の教授会で、当時副研究科長だった酒井朗先生(基礎工学研究科教授)が、教授会の報告事項で豊中地区研究交流会というのが始まりますというお話をされたことを覚えています。文系の先生方とも交流できるということで大変興味深かったのですが、日程が合わず、参加できないままずるずると何年も経ってしまいました。2年ほど前からこの交流会のお手伝いをさせていただくようになって、実際参加すると非常に楽しくて。創設の頃の大変さというのは存じ上げないのですけども、非常にスムーズに回っているなという印象を受けました。豊田先生も第1部※3でおっしゃっていましたけども、文系の先生方の研究にも理系と共通するようなものが多数ありまして、私は文系(のポスター発表)ばかり聞いているのですが、自分の研究とは言わずとも、何か共同研究に進んでいくのではないかというような印象を持つ発表が非常にたくさんあるなと思っています。このような交流会はもっと頻繁にあってもいいのではないか(笑)と思うぐらいです。

※3  「10周年記念インタビュー<第1部> 豊中地区研究交流会 誕生の経緯」のこと。豊田教授と北村教授の対談形式で同日行われた。https://www.sci.osaka-u.ac.jp/ja/event/16057

 

理学研究科•水谷泰久教授

[水谷教授(以降、敬称略)]今になってみると大変反省しておりますが、(この研究交流会が)スタートしたときにはそれほど積極的には参加しておらず、専攻内の委員として何度か参加する(程度でした)。そこでわかるのは、豊中地区だけとはいえ、本当にいろんな研究をされている方がいらっしゃるなということです。私は高校生のときに理系科目と文系科目の好き嫌いはそれほどなく※4、文系学部に進んでいた可能性もありました。ですので、(文系の)話を聞くハードルは高くはなくて、もちろん専門家レベルの話はわからないのですが、面白い話をたくさん聞くことができて、また単純に、同じキャンパスの中で面白いと思う研究をやっていらっしゃる方、少なくともご本人が面白いと思って研究していらっしゃる方がこんなにたくさんいるということを知り、非常に刺激になりました。

※4  10周年記念インタビュー<第1部>で、豊田教授が「高校までの文系の科目は大嫌いで」と話したことを受けての発言。

 

[北村]豊田先生はいかがでしょうか?

理学研究科•豊田岐聡教授

[豊田教授(以降、敬称略)]やはり面白いとご本人(ポスター発表者)が思っていることですよね、それをどう他人にわかってもらうかというところに(この研究交流会は)貢献しているのかな。最初の1、2回は『理系の発表は難しすぎる』と文系の先生に大分言われました。わからないと。どちらかと言うと文系の発表は見ていたらわかるところがあって、何をやられているかはわかる。面白さのところまで行くかどうかは別として。(それが)「理数系に関して高校までの知識しかない人」にもわかるように説明しましょうというように(理系の先生の意識も)大分変わってきた。理系の人間が自分の(研究の)面白さをよりきちんと伝えられるようになったのかなと、そういうところにも貢献しているのかなと、今、水谷先生のお話を聞いていて思いました。

[北村]文系も同じような課題がありまして、専門外の先生方に面白いと思っていただくということはあまり念頭になかったわけですね、もともとは。そこを変えていくきっかけになったとおっしゃる先生も多かったですし、やたらと複雑な数式で書いておられる先生方もおられますけれど、やっていることは結局一緒だということもわかってきました。(つまり)どの要因が重要なのかということを特定するプロセスはとてもよく似ていて、それを文字で書くか、数式で書くかの違いかなと、そういうような感覚を持つ先生も非常に増えた印象があります。私個人も、(高校生のときに)文系か理系のどちらに進むかわかっていなかったですし、あと(大学の)教養科目の理系科目が好きだったんですね。数学も、生物系も、地学も好きでした。いつも面白く理系の先生の(ポスター)発表を中心に聞いて、『なんで?』とか『これどういう意味があんの?』とか言ってしまうのですけれど、そういう形で楽しんでいるところです。

法学研究科•北村亘教授

[北村]今まで10年間、幸いなことに非常に高い評価を得て参りました。そこで、今後の10年間、と言うのかわかりませんけれども、今後をどのようにしていくのかは、やはり皆さんと考えていかないといけないと思っています。今のままでも、お互いの研究を知るということで楽しいですし、それも成功だと思いますけど、ここからもう一歩進むのか、進むとすればどの方向に進んでいくのかということについて、少しお話を伺えればと思います。

[水谷]学生の参加を増やすということが大事かなと思います。いろいろな学部の間で交流するということは、実は学生の方が進んでいるような気がします。部活であるとか、サークルであるとか、あるいは、それこそ高校のときの同級生で、違う学部に進学した友達とこのような(研究交流)会で再会することで、我々教員とは違った形の交流が進むのではないかと思います。いろいろな層で交流が進むということが大事なのではないでしょうか。

[北村]交流の密度を上げていくというようなイメージでしょうか。

[浜屋]最初は産学連携の方面から、このような取り組みが始まったということですけれど※5、産学連携というと、どうしても医学系や工学系の話に進みがちなところがあると思います。「豊中地区ならではの、文系と理系が融合した、作ったような文理融合ではない、自然に生まれたような文理融合」のプロジェクトが、産業界や社会課題に対してアプローチできる、何かそういう場に、この交流会が広がっていくような仕掛けがあれば非常にいいなと思っているところです。

※5  10周年記念インタビュー<第1部>の内容を受けての発言。

[北村]本当のOne More Stepになりますね、それは。

[豊田]さっきも申し上げましたけど※6、無理に何かしようというのは良くないと思っています。ただ、自然発生的にと言って黙っていても、多分何も出てこない。誰かがちょっと見ていて、我々とか、あるいは幹事部局の誰かが見ていて、『これは行けるんちゃうの?』というのを見つけていくのだろうと思います。それが我々の役割かなというように思います。

※6  10周年記念インタビュー<第1部>での発言。

[北村]そのような夢を語っていくことや方向性を語っていくことも重要ですね。もし今、発表を躊躇されているような方がおられたら、どのようなお声をかけられるかという点も少しお伺いしてもよいでしょうか。

[浜屋]基礎工学研究科の場合は、若手を育てるというプロジェクトがありまして、そういった若い先生方の発表の場を増やしたり、異分野の人にわかりやすく説明する場を提供したりするという意味で、若手の先生方に基本的にお声がけしています。その中で、あまり嫌だとおっしゃる先生はいらっしゃらなくて、ほとんどの場合ご快諾いただける状況です。(発表が)終わった後は、『大変面白かった』『こんな場があるんだったら、ぜひまたよろしくお願いします』というようなことをおっしゃっていただけるので、知らないと逆に本当にもったいないという会だと思っています。そういったことをもう少し広めて、先生方に(実際に)足を運んでいただければ、皆さんにアグリーしていただけるような、そういう会になるのではないかと思っています。

[水谷]『まずは参加してみてください』ということなのかと思います。私も理学研究科の中で、特に同じ専攻で参加された方から、面白かったと聞きます。やはり「参加してみないと分からない」ものだと思いますよね。案内を見るだけで、『じゃあ参加してみよう』という方は残念ながらそれほど多くないと思うのですけれど、「行ってみると面白い」ということが分かる。だからまずは参加してみる。そのハードルを下げることが大事かなと思います。

[豊田]私が(委員を)やっていたときも、拒否される方は基本いなかったですね。ただ、だんだん歳をとってくると面白いと感じるようになりますが、先ほど水谷先生がおっしゃったように、学生がどう思うのかという点は、悩ましいところですね。かと言って、我々も学生のときにどうだったかと言われると、我々の先生のようにはいかない。我々の先生達はみな博学でね、理系であってもいろいろなことをやられている先生が多かったですけれど、我々はそういう世代ではないし、その下となると何も興味がないという世代になってきます。そのような人たちを無理やり行かせるべきなのかというところがあって、理学研究科では、今はあまり学生さんに発表させてはいないのですが、文系は時々ありますね。

[北村]院生さんくらいですね。

[豊田]その辺をどうしていくのが良いのか、無理やり興味を持ちなさいというのは無理なのかなと思います。「自然と興味を持ってくれるようにするにはどうしたらよいか」を考えていくことが、次の世代を育てることにつながるのかなと感じています。

[北村]数年前に事務職員さんから聞いたのですけれど、この研究交流会は、事務職員さんにとっても、いろいろな先生が何をしているかを知るチャンスであると。仕事をしている時間ですから、そこを抜けて参加することは難しいけれど、本当は事務方として参加したいと。勤務体系が違うので簡単にはいかないにしても、本当は先生方のことを知りたいと思っていて、わからないことをご本人に聞くことができる機会ですし、職員の研修などにこれを使えませんか?と。この辺りの可能性は広げていけると考えてもよろしいでしょうか?

[豊田]参加していただいていいと思いますよね。自由に来ていただいたらいいと。どうですかね、難しかったりするのでしょうか。事務長などのご理解をいただければいいのかなと。

[北村]事務の方は手伝いのとき以外に行っていいのかわからないこともあるようです。

[豊田]事務の方でも、いろいろなことを学びたいとか、知りたいと思っておられる方がたくさんおられるはずなので、勤務時間内ではありますが、大学のオフィシャルな行事ですから、来ていただいたらいいと思いますけどね。

[北村]わかりました。ありがとうございます。では、先生方に最後に一言ずつ今後の抱負や、こうあってほしいなということを含めて、お話を伺えればと思います。

[豊田]これは「続けることが大事」だと思っています。いい取り組みなので、絶やさない。一回絶やすと復活できないので、まずは続けていく。ただ、続けていくためには労力がかかる。今はURA※7の方にかなり手伝っていただいているので回っていますけど、これをどうしていくのかというところを考えながら回していくのかなと。幸いにも総長も含めて大学にご理解いただいてサポートもしていただいていますし、全(参加)部局も協力してやれているので、この体制をうまく続けていくことが大事かなと思っています。

※7  理学研究科、法学研究科、基礎工学研究科に所属するURAのこと。

過去の発表者に対するアンケート※8より
「本研究交流会をきっかけとして、共同研究や研究交流は始まりましたか?」
6件の研究交流に加え、文理融合の共同研究が1件始動(第1回での交流から9年を経て共同研究へと発展)

[水谷]このような研究交流会の取り組みが、実際に形ある研究プロジェクトなどに発展するという確率はあまり高くないと思いますが、もともとそういうものだと思います。また、どういう方向に発展するかということも、なかなか予想がつかない。そういう意味では、たくさん種を蒔くということが大切ではないでしょうか。豊田先生もおっしゃったように、「長く継続する」ということが大事なので、そのためには「無理をしない」ということと、その中で「少しずつ広げる努力をしていく」というのが大事なのではないかなと思います。先ほども申し上げましたけれども、行ってみると面白いし、研究の内容は詳しくわからなくても、それぞれの方が自分の研究を面白いと思って話をしていますから、そういう人たちと接するということは、シンプルに『研究って面白いんだな』と思える、すごく大事なことだと思いますよね。キャンパスを同じにしている者同士が、そのように感じられるということが、まずは我々にとって大事かなと思います。

※8  過去の発表者のうち、メールアドレスがわかる297名に依頼し、54名から回答を得たもの(アンケート実施期間:2025年9月25日〜10月9日[回答率:18.2%])。アンケート結果の全体像は「豊中地区研究交流会の10年:分野を超えた知の交流の軌跡(ポスターPDF)を参照。
https://www.sci.osaka-u.ac.jp/ja/event/16056

 

[浜屋]研究者はどうしても専門に特化しやすいというか、視野が狭くなりますよね。それが、こういう会があることによって広くなる。視野が広くなると何か書類を書くにしても、もう少し文系の先生にもわかるように書こうとか、いろいろ思うことってありますよね。そういう視野を広げてもらう機会として、特に若手の先生方に、非常に良い機会だなと思っています。それが共同研究などにつながれば大成功になるのでしょうけど、なかなかそうはいかないと思いますけども、先生方の成長にもつながる良い会なので、引き続きぜひ続けていただきたいと思います。

[北村]文系も同じだと思います。文系と一括りに言うのも少しおかしいですけれど、法学研究科もそうですし、多分、経済学研究科であったり、人文学研究科であったり、いろいろな部局でも同じだと思います。我々はまずは頭(の中)で考えて、個人レベルで対話する。そして発表を通して他者と対話して、また考える。そういった経験は、後で書類を書いたりするときに、すごく刺激になりますよね。『こういうように考えて説明した方がもっとわかりやすくなるかな』なども含めて、刺激を得ているわけです。月並みな言い方になりますが、「継続は力なり」ということに尽きるのかなとも思っております。
それでは、とりあえずこういう形で、次の10年も無事に進めていきたいと思っておりますので、またよろしくお願いいたします。

[豊田、水谷、浜屋]よろしくお願いします。

 

基礎工学国際棟前、銀杏通りにて
(2025年9月18日撮影)

座談会参加者:

豊田岐聡(とよだみちさと)理学研究科 教授
北村亘(きたむらわたる)法学研究科 教授
水谷泰久(みずたにやすひさ)理学研究科 教授
浜屋宏平(はまやこうへい)基礎工学研究科 教授

 

 

 

 

 

 

 

編:大阪大学豊中地区研究交流会 幹事部局URA(2025/12/5)

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