図A:様々なN型糖鎖構造。例えば24位に付加している糖鎖は、図Bのような特定のものだけではなく、ここに示したような様々な構造異性体のどれかが結合した状態で存在している
図B:今回化学合成した高純度糖鎖を三本(24, 38, 83位)持つエリスロポエチンの構造
大阪大学大学院理学研究科化学専攻 有機生物化学研究室の村上真淑博士、木内達人、岡本亮助教、和泉雅之准教授、梶原康宏教授 および、株式会社 糖鎖工学研究所手塚克成博士、西原三佳研究員らのグループは、ヒト型の糖鎖をもつエリスロポエチンを化学合成するとともに、糖鎖の付加位置および付加数を変えたエリスロポエチンを種々合成し、糖鎖の純度、糖鎖付加位置とエリスロポエチンの薬理活性の関係を緻密に調べることに成功しました。
糖鎖は、タンパク質の薬理活性発現に必要不可欠であることは知られていましたが、従来のバイオテクノロジー法では、得られる糖タンパク質の糖鎖構造が不均一で、どのような構造の糖鎖が、タンパク質のどの位置に付加すると薬理活性が向上するかという構造と活性の相関関係を理解することが困難でした。
今回、鍵中間体の合成課題を解決することで有機合成化学法により、生体高分子である糖タンパク質の精密化学合成を達成しました。これにより、成熟型の高純度のヒト型糖鎖が、遺伝子により決められている本来の糖鎖付加位置に全て付加することで最も薬理活性が向上することを化学的視点で初めて確認することに成功しました。
これにより、世界中で利用されているタンパク質製剤を、高純度糖鎖を用いて化学的に自在に合成することで、より高い活性をもつ次世代型バイオ医薬の開発に応用されることが期待されます。
本研究成果は、2016 年 1月15日(金)14時 (米国東部時間)に、「AAAS (American Association for the Advancement of Science)」のオンライン版 Science Advances (http://advances.sciencemag.org)で公開されました。
図A:様々なN型糖鎖構造。例えば24位に付加している糖鎖は、図Bのような特定のものだけではなく、ここに示したような様々な構造異性体のどれかが結合した状態で存在している
図B:今回化学合成した高純度糖鎖を三本(24, 38, 83位)持つエリスロポエチンの構造
梶原 康宏(かじはら やすひろ)
大阪大学大学院理学研究科 化学専攻 教授
〒560-0043 大阪府豊中市待兼山町1-1
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