(a)ゼオライトの一種であるソーダライトと呼ばれるカゴ状の物質と、(b)カゴの中に保持されたカリウム金属ナノ粒子の模式図を示しています。このナノ粒子では、4つのカリウムイオンの上に、1つの電子の「雲」が広がっています。本研究では、このカリウムイオンの中心にある原子核にSPring-8の高輝度放射光を吸収させ、メスバウアー分光を行いました。そして、この電子の「雲」が磁性の担い手であることを直接的に示すデータの取得に成功しました。
中野岳仁助教(大阪大学大学院理学研究科)、瀬戸誠教授(京都大学原子炉実験所)、および、依田芳卓主幹研究員(高輝度光科学研究センター)らによる研究グループは、これまで測定が非常に難しかったカリウム原子核のメスバウアー吸収を、大型放射光施設SPring-8のBL09XUを用いた手法で初めて観測することに成功しました。測定対象は、カリウム金属のナノ粒子が規則正しく配列することにより磁気的な性質を帯びるという不思議な物質で、その磁性の原因にミクロな視点からせまる情報も初めて得られました。
カリウムは、肥料や食品添加物・火薬などに用いられたり、私たちの体内にもたくさん含まれる元素です。この実験手法は、非常にありふれた元素のカリウムを含んでいればどのような物質にも適用可能であり、物理学・化学・材料科学・生物学・地学などの幅広い分野での活用も今後期待されます。
本研究成果は4月6日(米国東部時間)に、米国物理学会誌「Physical Review B, Rapid Communication」オンライン版に掲載されました。
(a)ゼオライトの一種であるソーダライトと呼ばれるカゴ状の物質と、(b)カゴの中に保持されたカリウム金属ナノ粒子の模式図を示しています。このナノ粒子では、4つのカリウムイオンの上に、1つの電子の「雲」が広がっています。本研究では、このカリウムイオンの中心にある原子核にSPring-8の高輝度放射光を吸収させ、メスバウアー分光を行いました。そして、この電子の「雲」が磁性の担い手であることを直接的に示すデータの取得に成功しました。
大阪大学大学院理学研究科物理学専攻
助教 中野岳仁
Tel:06-6850-5375 Fax:06-6850-5376
E-mail:nakano@phys.sci.osaka-u.ac.jp