大阪大学大学院理学研究科の安田賢生さん(博士前期課程)、大塚洋一准教授、豊田岐聡教授らの研究グループは、生体組織中の細胞一つひとつの化学成分の違いを調べるための質量分析イメージング技術を高感度化し、長時間安定して測定できる新しい測定手法を開発しました。
質量分析イメージングは、組織切片に含まれる脂質などの分子を気体状態のイオンに変換し、その質量情報を精密に調べることで、分子がどこに、どの程度存在するかを画像として可視化できる技術です。これまで、一つの細胞よりも小さなピクセルサイズで質量分析イメージングを行うには、測定点ごとに得られる分子の量が少なくなるため、計測が難しくなることや、長時間測定中にプローブの先端が組織由来の成分で覆われ、分子の抽出とイオン化が不安定になることが課題でした。
今回、研究グループは、これまで研究開発を続けてきたタッピングモード走査型プローブエレクトロスプレーイオン化法(t-SPESI)を基に、測定装置を小型化し、質量分析装置へのイオン導入効率を高めました。さらに、プローブ表面にPFPTESというフッ素を含む分子層を作ることで、組織成分の付着を抑えることに成功しました。その結果、マウス脳組織において5マイクロメートルのピクセルサイズで脂質の分布を高精細に可視化できました。
本成果は、t-SPESIによるシングルセル質量分析イメージングを疾患組織に適用することにより、病気に伴う細胞ごとの成分分布の変化を分子レベルで明らかにする新しい分析技術としての応用が期待されます。
本研究成果は、米国化学会誌「Analytical Chemistry」に7月4日に公開されました。

表面が分子膜でおおわれたプローブを用いて、マウス脳組織表面の微小領域に含まれる脂質を抽出し、イオン化している様子。プローブを、上下方向に高速に振動させながら、組織上を二次元方向に走査することで、組織中の脂質分布を可視化することができる。
本件に関する問い合わせ先
大阪大学 大学院理学研究科 物理学専攻
准教授 大塚 洋一 (おおつか よういち)
TEL:06-6850-8240
E-mail:otsuka@phys.sci.osaka-u.ac.jp