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    スピン流でらせん磁性体のスピン位相を検出
    ―ナノスケール磁性の新しい読み出し手法を提案―
研究トピックス
2025/11/06 投稿

\電気で“スピン位相”を読み取る!/
スピン流でらせん磁性体のスピン位相を検出
―ナノスケール磁性の新しい読み出し手法を提案―

大阪大学大学院理学研究科物理学専攻の蒋男助教、新見康洋教授らの研究グループは、東邦大学理学部物理学科の大江純一郎教授、大阪公立大学大学院工学研究科電子物理系専攻の戸川欣彦教授と共同で、スピン流を用いた非局所スピンバルブ測定により、らせん磁性体Cr1/3NbS2のスピン位相を電気的に検出することに世界で初めて成功しました。

らせん磁性体は、磁気モーメントがらせん状に配列する特性を持つ新しいタイプの材料で、従来の強磁性体にはない非磁化という特徴から、高集積化が可能で、次世代の情報媒体として期待されます。Cr1/3NbS2は、らせん型の磁気構造を有しており、このらせん磁性体の表面にスピン流を注入すると、主に表面の磁気状態とスピン流が相互作用します。この表面敏感な特性を活かし、らせん磁性体のスピン位相(らせん磁気構造の位相)を電気的に検出しました。さらに実験結果は、数値シミュレーション(マイクロマグネティックシミュレーション)でも再現されました。

これまで試料表面の磁気モーメントの向きであるらせん磁性体のスピン位相の検出には、表面敏感なX線磁気円二色性やスピン偏極走査型トンネル顕微鏡などの特殊環境を要する手法が必要であると考えられており、デバイス応用可能な電気的検出方法については解明されていませんでした。

今回、研究グループは、ファンデルワールス層状らせん磁性体Cr1/3NbS2を非局所スピンバルブ素子に組み込むことにより、スピン流によるらせん磁性体のスピン位相の電気的検出に成功し、大型装置を用いずにスピン位相を読み取れることが示されました。

これにより電気的にナノスケール磁性の「位相」を扱えることが示され、将来的には強磁性体の磁化の代わりにらせん磁性体のスピン位相を情報自由度として活用する低消費電力デバイスへの発展や高集積化につながると期待されます。

 本研究成果は、米国科学誌「Physical Review B」にLetterとして、さらにEditors’ Suggestionとして、11月6日(木)に公開されました。また、APS Physics MagazineにSynopsisとして掲載されました。

 

(左)スピン位相の模式図(右)らせん磁性体Cr1/3NbS2を組み込んだ非局所スピンバルブ素子の模式図

 

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〈共同リリース機関HP〉

本件に関する問い合わせ先

大阪大学 大学院理学研究科 物理学専攻
助教 蒋 男(じゃん なん)
TEL:06-6850-5370
E-mail: nan.jiang@phys.sci.osaka-u.ac.jp