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研究トピックス
2018/03/23 投稿

「〜立ち上がって、天井を掴む〜 細菌べん毛モーターが回る鍵、固定子を“固定”するしくみを解明!」

大阪大学大学院理学研究科の今田勝巳教授、名古屋大学大学院理学研究科の小嶋誠司准教授・本間道夫教授、横浜国立大学大学院工学研究院の児嶋長次郎教授の共同研究グループは、細菌のべん毛モーターが回るための鍵となる固定子をつなぎ止めるしくみを世界で初めて明らかにしました。(図1)
細菌はべん毛と呼ばれるらせん状の繊維をタンパク質でできたモーターを使ってスクリューのように回して泳ぎます。べん毛モーターには、電気モーターと同様に回転子と固定子があり、両者の相互作用で力が発生します。このとき、力に負けないように固定子をしっかり固定しないとモーターは回りません。べん毛モーターの固定子は、細菌の細胞壁であるペプチドグリカン層に固定されると信じられていました。しかし、誰も固定子の細胞壁への結合を示したことはありませんでした。また、精製した固定子タンパク質は細胞壁に全く結合しないため、どのように固定子が固定されるのか、長い間謎でした。今回、共同研究グループは、モーターに組み込まれやすい変異体の実験から、固定子が細胞壁に結合することを世界で初めて示しました。また、変異体の固定子タンパク質の構造と構造変化を明らかにし、イオンを通しやすい活性型固定子に構造が変化すると、細胞壁に結合できるようになることがわかりました。細胞壁に結合するタンパク質は数多くあり、これらにも共通するメカニズムであると考えられます。細胞壁は多くの病原菌に存在する一方でヒトや動物細胞にはありません。本研究の知見は、生物の持つモーターの回るしくみの解明はもとより、新規抗菌薬開発の手がかりにもなると期待できます。
本研究成果は、2018年3月23日(金)午前1時(日本時間)、米国科学誌「Structure」にオンライン公開されます。

図1 固定子を”固定”するしくみ

本件に関する問い合わせ先

大阪大学 大学院理学研究科 教授 今田 勝巳(いまだ かつみ)
TEL:06-6850-5455/5456 FAX: 06-6850-5455
E-mail: kimada@chem.sci.osaka-u.ac.jp