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研究トピックス
2015/12/14 投稿

次世代デバイス開発の扉を開く電子構造を発見 ~トポロジカルな舞台での「強相関スピントロニクス」時代の幕開けへ~

シリコンデバイスの微細化と性能限界の問題が目前になり、次世代デバイスの台頭が待たれています。電子の自由度の1つである電荷を操る「エレクトロニクス」で繁栄した人類をさらに飛躍させる未来型デバイス開発の鍵として、電子が持つもう1 つの性質であるスピンをも制御する「スピントロニクス」が注目されています。しかしながら、一般的な物質では、そのスピンの回転軸の向きと電子の運動する方向とは無関係でばらばらであるため、デバイス応用に困難を伴います。一方、近年発見された「トポロジカル絶縁体(2007 年発見)」や「ワイル半金属(今年発見)」と呼ばれる新奇物質群では、電子の運動方向に付随してスピンの向きが自発的に決まる、つまりスピンの向きが揃った状態である純スピン流が流れており、その特性を活かすデバイス応用が期待されています。

東京大学物性研究所の近藤猛准教授、中辻知准教授、辛埴教授らの研究グループは、既存のトポロジカル絶縁体やワイル半金属と、電子同士の強い相互作用(強相関)を組み合わせることで、更なる新機能を持たせる物質開発に着手しています。今回、豊田工業大学物質工学分野の松波雅治准教授、大阪大学大学院生命機能研究科の木村真一教授(理学研究科物理学専攻兼任)、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の小野寛太准教授、組頭広志教授らと共同で、その未踏の物質開発の扉を開く電子状態を、イリジウム酸化物で発見しました。本来は反発し合う荒くれ者である強相関電子たちを手なずける指針が整ったことで、新奇なトポロジカル状態を舞台とする「強相関スピントロニクス」の新時代到来が期待されます。

この研究成果は、Nature Communications 誌 (12 月7 日午前10 時:日本時間 12 月7日午後7 時) に掲載されました。

research20151214

図: 物質内には実世界(位置座標空間)とは異なるフェルミ海(運動量空間)が存在する。海面に顔を出す島(電子構造)が物質の電子物性を担うため、その形状を同定することが物質開発において極めて重要となる。本研究では、強い電子-電子相互作用(強相関)を持つイリジウム酸化物で、その海面に一点のみで顔を出す特異な放物型電子構造の直接観察に成功した。この特異点は空間対称性と時間対称性に保護されており、トポロジカル相への母体電子状態となる。空間対称性を破ればトポロジカル絶縁体に、また時間対称性を破ればワイル半金属に変化することが理論的に示されている。

本件に関する問い合わせ先

大阪大学大学院生命機能研究科 光物性研究室
教授 木村 真一(きむら しんいち)
TEL : 06-6879-4600 FAX:06-6879-4601
E-mail:kimura@fbs.osaka-u.ac.jp
関連URL:http://www.kimura-lab.com/