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研究トピックス
2015/10/23 投稿

~ミクロの世界から宇宙まで、その成り立ちを理解する根源理論の成果~ 3次元時空の量子重力理論の厳密計算に成功

飯塚 則裕(大阪大学大学院理学研究科助教)は、田中 章詞(研究開始時大阪大学大学院生、現在は理化学研究所基礎特別研究員)、寺嶋 靖治(京都大学基礎物理学研究所助教)との共同研究により、宇宙定数が負の場合、3次元(空間2、時間1次元)の量子重力理論(現代物理学の2大柱:量子力学とアインシュタインの一般相対性理論を統一した理論)の厳密な計算をある等価性の下で行うことに世界で初めて成功しました。

量子力学は、電子のような小さな粒子が運動する経路を計算する方法です。量子力学の基本原理である「経路積分」は、従来の方法では厳密計算が難しく、多くの場合近似手法に頼るしかありませんでした。一方、3次元重力理論は、チャーン・サイモンズ理論と古典的には等価であることが知られています。本研究では、3次元(2+1次元)重力理論に対応すると考えられるチャーン・サイモンズ理論において、量子論の根底となる「経路積分」を、「局所化」という近年発展した新たな手法を用いて、厳密に計算することに成功しました。これは、3次元量子重力理論を厳密に計算したことに相当します。

宇宙がどのようにビッグバン以前に始まったのか?ブラックホールの中心で一体何が起こっているのか?これらを理解するためには、現代物理学の枠組み(標準理論)を超えて量子重力理論が必要です。量子重力理論は我々の宇宙の成り立ちを理解するための鍵となる理論です。本研究成果は、未だ発展途上にある量子重力理論の理解を切り開く一つのステップといえます。また、本研究を契機にして、量子重力理論、場の量子論、ゲージ重力対応のより深い理解への発展が期待されます。

本研究結果は、2015年10月16日に「Physical Review Letters」のオンライン版にて発表されました。

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【図】3次元量子重力の分配関数 Z を計算するためには時空の経路積分を行う必要がある。本研究では、局所化の手法を適応することにより、この時空の経路「積分」が、様々な時空上のチャーンサイモンズ理論の厳密解の「和」に帰着するとして3次元量子重力の分配関数の厳密計算を行うことに成功した。

本件に関する問い合わせ先

大阪大学大学院理学研究科 物理学専攻
助教 飯塚則裕(いいづか のりひろ)
Tel:06-6850-5730 Fax:06-6850-5732
E-mail: iizuka@phys.sci.osaka-u.ac.jp