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研究トピックス
2015/01/07 投稿

鉄原子42個からなるカゴ状磁性分子の合成に成功 〜巨大分子磁石の世界記録を樹立〜

九州大学、大連理工大学(中国)、高輝度光科学研究センター、熊本大学、九州工業大学、大阪大学、東北大学の研究グループは共同で、これまでに人工的に合成されたなかで、最も巨大な分子磁石となるカゴ状磁性ナノクラスター分子を開発することに成功するとともに、大型放射光施設SPring-8の世界最高クラスのX線装置と東北大学の強磁場実験施設を用いて、その複雑な分子構造と電子状態を解明しました。

近年、分子エレクトロニクスへの応用を目指し、人工的に磁性分子を合成して巨大なナノスケール磁石を作る競争が世界的に展開されています。共同研究グループは、今回、鉄(Fe)原子42個から構成され、Feの原子磁石の間に、磁極の向きを揃えるような強磁性相互作用が働くナノクラスター分子を精密に設計・合成し、1分子がもつことのできる磁石の大きさの世界記録(90ボーア)を樹立しました。また、X線構造解析により、合成した磁性ナノクラスター分子がナノメートルサイズの中空のカゴ状構造をもつことを明らかにしました。カゴ状構造をもつ分子は、その空間を利用した分子貯蔵やナノサイズの化学反応容器(ナノフラスコ)としての応用が期待され、現在最も注目されている分子材料の一つです。

本研究成果は、2015年1月6日(火)午前10時(英国時間)に、オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載されました。

research20150107

図1 a) Fe42核ナノクラスター分子の結晶写真。立方体構造をとる。b) SPring-8の単結晶構造解析ビームライン(BL02B1)で明らかとなったFe42核ナノクラスター分子の分子構造図(Feを、2価:緑色、3価:橙色の丸で示す)。Fe原子のネットワークの中心が中空構造(青球:直径1.5ナノメートル)をとっており、他の分子を吸蔵したりすることが可能である。1ナノメートルは10億分の1メートル。

本件に関する問い合わせ先

大阪大学大学院理学研究科附属構造熱科学研究センター 
教授 中野 元裕
TEL:06-6850-5523 FAX:06-6850-5523
MAIL:moto@chem.sci.osaka-u.ac.jp