【概要】
スマートフォンや車の傷を放っておけば治る―。難しいことですが、それが可能になりつつあります。
これまでにも、部分的に細かく凹んだ傷が弾力でもとにもどる技術はありました。これを「物理的な自己修復」と言います。では、切れてしまったものは元通りにつながるでしょうか?
本研究科 原田明特任教授(常勤)はナノレベル(分子レベル)の小さなブロックのような仕組みを用いて、切れたものを元通りにつなげることに成功しました。これを「化学的な自己修復」と言います。
本学は、この「化学的な自己修復」について『切れてもつながる自己修復材料』をテーマに、7月2日(月) から 8月10日(金)まで、文部科学省2階エントランスで企画展示を行います。
本展示では、「化学的な自己修復」を可能とする『自己修復ポリマー』の原理やメカニズムをパネルや模型でご紹介するとともに、体験イベント時には、自己修復ポリマーを実際に切ったりくっつけたり、「化学的な自己修復」を参加者ご自身の手で体験していただけます。
【展示概要】
(期 間) 2018年7月2日(月) ~ 8月10日(金)
(場 所) 文部科学省2階エントランス(東京都千代田区)
(展示内容) 自己修復ポリマーのしくみと特長、実用化について、パネルでわかりやすくご紹介するとともに、自己修復ポリマーで作製した心臓モデルやカエルの模型などを展示します。
(体験イベント) 7月2日(月)、8月1日(水)、2日(木)、10日(金) [いずれも午前10時から午後4時まで] は体験イベントとして、自己修復ポリマーの実物を実際に触り、切ったりくっつけたりを体験できます。
【自己修復ポリマーのしくみと特長】
通常の分子はくっつけたり、くっつけた後に外したりは、簡単には出来ません。しかし、分子の中にはブロックおもちゃのように“くっついたり-外したり”が簡単に出来る分子があります。本研究科 原田明特任教授(常勤)らの研究グループでは、シクロデキストリン(CD)というバケツの片方が少し狭くなったような円筒形の分子に関する研究を行っています。CDはその内側の空洞部へのゲスト分子の“包接”そして空洞からゲスト分子の出ていく“解離”が繰り返し行える分子の一つです。
CDの一種であるβCDとその空洞にぴったりと入るゲスト分子(アダマンタン)を高分子にぶら下げ、その高分子同士をβCDとアダマンタンの包接体で繋げたポリマー材料は、切断された面同士を接着させることにより、切断面を修復することが出来ます。
これにより、自己修復ポリマーは、切断したり、傷つけたりしても、元の強度まで回復する自己修復の他、「伸びる」、「破れにくい」、「潰れにくい」等の特長を有し、医療研修用臓器モデル、クッション材、接着剤、玩具など、様々な用途での実用化が期待されます。
○参考
文部科学省情報ひろば