知的好奇心の扉を開く
この世は謎に満ちています。
私達は、なぜ今ここにこうしているのか、それを知りたいと思いませんか。
この世(宇宙)の始まりやこの世の果てを知りたい、
この世を形づくっている物の起源を知りたい、
私たちの体がどういう仕組みで動いているのか、
つまり私たちがなぜ生きているのかを知りたい、
いろいろな物質の不思議な性質の仕組みを知りたい・・・。
理学の研究は、そんな素朴な疑問や興味から出発した研究です。
その成果の一部を、多くの方に紹介し、
少しでも“おもしろい!”という気持ちを
共有していただけたら、と思ってこのイベントを計画しました。
どうか、ひとときの科学の夕べをお楽しみいただければ、と思います。
「宇宙」と聞くと、とても静かな漆黒の闇の中に、点々と星や銀河が散りばめられている風景を思い浮かべる方が多いでしょう。それは、我々に見える光(可視光)で宇宙を観察した際の、宇宙のほんの一面でしかありません。宇宙をX線で観察すると、可視光で見た様子と全く異なり、「熱く激しい」側面ばかりが見えてきます。今回の講義では、X線で観測した宇宙に関して解説いたします。
グラフェンは炭素原子1個の厚さからなる究極の薄膜です。グラフェンの電子は「質量のない相対論的粒子」として振る舞い、様々な異常な物性を引き起こします。最近の研究では、2枚のグラフェンを回転させて重ねると、グラフェン同士のモアレ干渉模様が超伝導をもたらすこともわかっています。このトークでは、様々な不思議な物理現象を通してグラフェンの魅力に迫ります。
葉緑体は、太陽から降り注ぐ光エネルギーを、生物が利用できる形のエネルギーや物質に変える反応である光合成の場です。葉緑体は、光合成を営むことにより、地球上のすべての動植物の命を支えています。講義では、葉緑体がどのようにして誕生したのか、葉緑体が緑色に見えるわけ、葉緑体が生育光条件によって姿を変えること、葉緑体が細胞の中で動き回ることなど、ちょっとマニアックな葉緑体の横顔を紹介します。
人工知能であるニューラルネットワークは脳の構造を真似しています。では最終的に人間の科学が脳を創ることは可能なのでしょうか? 答えを言ってしまうと、我々はまだ脳を創れません。ただ今、様々な方法で人工知能であるニューラルネットワークを物理的に作ろうとする研究が進行しています。脳とコンピューター、ニューラルネットワークの違い、ニューラルネットワーク計算の基本等から最先端の研究までを判りやすく解説します。
多くの細菌がモーターを使って泳ぐことを知っていますか?細菌は、”べん毛”という繊維状の器官をスクリューのように回して生存や感染に適した環境へ移動します。べん毛の根元には直径約50 nmの蛋白質でできたモーターがあり、細胞内外の水素イオン濃度差を使って、毎分1万回転を超える速さで回転します。この講座では、自然がつくり上げた超精密機械である細菌べん毛のしくみを解説し、病原性にも密接に関係する細菌の運動性の謎に迫ります。
近年、大量のデータを用いて計算機に「学習」させる機械学習の隆盛などにより、何度目かの人工知能ブームが訪れています。実は、機械学習やデータ解析の分野では、驚くほど多様な数学理論が利用されています。例えば、2つのデータがどの程度近いかを測る「輸送距離」は、熱の伝播や空間の曲がり方と関係し、数学でも活発に研究されているものです。データ解析と機械学習、それらに関わる数学理論について、深入りはせずにざっくりとお話しします。