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研究トピックス
2017/07/12 投稿

乳がん、卵巣がんの抑制遺伝子の働きを助けるタンパク質SCAIを新発見~効果的ながん治療法の発展に期待~

大阪大学大学院理学研究科の小布施力史教授らの研究グループは、遺伝性乳がん、卵巣がんを抑制する遺伝子BRCA1(ブラカワン)の働きを助けるタンパク質SCAI(スキャイ)を新たに発見しました。
DNAに損傷が蓄積していくと、がんや老化を引き起こしやすくなりますが、それに対して生物は、損傷したDNAを修復する様々な仕組みを備えています。BRCA1はDNA修復に関わる遺伝子のひとつで、これが適切に働かないことが原因で乳がんや卵巣がんになることが知られています。医療の現場では、がんの発症前診断に利用され、BRCA1の変異で生じたがんに効果的な治療薬(抗がん剤)も作られています。しかしながら、BRCA1そのものを制御するメカニズムは、未だ多くの部分が未解明です。
小布施教授らの研究グループは、SCAIの機能を調べるために、BRCA1の変異によるがんに効く抗がん剤を用いた実験を行ったところ、SCAIタンパク質を人工的に働かなくした細胞が、抗がん剤の影響を受けやすくなりました。このことから、SCAIが働けなくなることに連動して、BRCA1がDNAを適切に修復することができなくなることが明らかになりました。(図参照)
今後、今回発見したSCAIが詳しく解析されることによって、BRCA1の変異が引き起こすがん発生のメカニズムの理解が進み、発症前診断やより効果の高い予防薬、がん治療法の開発につながると期待されます。
本研究成果は、2017年7月12日(水)午前1時(日本時間)に国際雑誌「Cell Reports」のオンライン版で公開されます。

図  DNA切断の修復においてBRCA1が働くためにはSCAIが必要

本件に関する問い合わせ先

大阪大学 大学院理学研究科 生物科学専攻
教授 小布施 力史(おぶせ ちかし)
TEL:06-6850-5812  FAX: 06-6850-5987
E-mail:obuse@bio.sci.osaka-u.ac.jp