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研究トピックス
2016/11/11 投稿

凹み傷も切り傷も自己修復できるコーティング材料を開発 ― 車のコーティングから止血シートまで幅広い分野で製品化に繋がる可能性 ―

大阪大学大学院理学研究科 基礎理学プロジェクト研究センター原田明特任教授(常勤)らの研究グループは、内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の伊藤耕三プログラム・マネージャーの研究開発プログラムの一環として、これまでにない新しい設計原理の自己修復材料を開発しました。

従来の自己修復材料は、凹んでも元に戻るという材料自体の特性を利用したものや切れても繋がる結合を用いたものが主流でした。一方、「硬いものは傷つくと修復しにくい」という課題は解決されておらず、これを解決する新しい設計原理での自己修復材料の開発が望まれていました。

本研究グループは、ポリロタキサンという特殊な構造の高分子をベースとし、その間に切れても繋がる可逆的な結合を導入した設計の自己修復材料を開発しました(図1)。この材料は、溶媒を含んだ状態では、切断・再接触させても10分以内に修復率が元の80%以上まで回復し、また溶媒を含まないフィルムの状態では、表面につけた傷が30分以内にほぼ100%まで回復するという極めて速く効率の高い自己修復性を示すことを明らかにしました。

本材料は、自己修復材料の設計指針に新たな一石を投じるものであり、コーティングなどの化成品から医療用材料に至るまで、幅広い分野への応用が期待されます。

本研究成果は、Cell Press発行の総合化学誌「Chem」(日本時間11月11日(金)午前2時)に掲載されました。

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図1 材料設計の概念図
ポリロタキサンのひも状分子に沿った輪分子の動きを利用した「物理的自己修復(凹み傷が元に戻る)」の概念と、分子レベルで切れても繋がる可逆的結合を利用した「化学的自己修復」の概念、それらを組み合わせた自己修復材料(本研究)の概念図。

本件に関する問い合わせ先

大阪大学大学院理学研究科 基礎理学プロジェクト研究センター
特任教授(常勤) 原田 明(はらだ あきら)
E-mail:harada@chem.sci.osaka-u.ac.jp

大阪大学大学院理学研究科 高分子科学専攻
講師 高島 義徳(たかしま よしのり)
E-mail:takasima@chem.sci.osaka-u.ac.jp